2001年4月に家電リサイクル法が施行されてから、丸10年。リサイクル関連法の中でも順調に進展し、家電リサイクルは予想を上回る再商品化率を達成し続けています。プラスチック素材のリサイクル率も上昇中です。では、それはどのような方法で実現されているのでしょうか。
プラスチック処理促進協会はこのほど、千葉県市川市の家電リサイクル工場、株式会社ハイパーサイクルシステムズ本社工場を訪問しました。この日(2011年4月5日)は、同工場が2001年から家電リサイクル法対応の処理を始めてからの累計処理台数がちょうど1000万台を突破した記念すべき日。操業以来、家電リサイクルの先導的役割を果たしてきた同工場の概要を紹介します。
会社概要
株式会社ハイパーサイクルシステムズ 本社工場 | |
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〒272-0003千葉県市川市東浜1-2-4 1999(平成21)年4月1日設立 | |
処理能力 | 734.2t/日(24時間)<2009年4月変更許可> |
設備概要 | 冷蔵庫断熱材フロン回収設備 破砕選別設備 プラスチック残さ粉砕選別設備 |
処理実績 | (2009年度) 家電製品67万台/年 OA機器40万台/年 |
処理品目 | 薄型テレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、OA機器、その他電気製品 |
ハイパーサイクルシステムズ(株)は、三菱電機(株)と(株)市川環境エンジニアリングの共同出資で設立、家電リサイクル法施行より2年早い1999年4月に操業を始めました。
当初はコピー機などOA機器と自治体からの家電品の一般廃棄物処理を引き受けていました。そのノウハウを蓄積して家電リサイクル法施行に備え、2001年に同法が施行されると同時に、同社はA、B、二つのグループに分けられた全国の家電リサイクルルートのうち、Bグループの一大拠点となりました。
当初より、断熱材フロン回収に代表される環境への配慮、高い再商品化率を実現するための工程実現、回収物の販売先の開拓を行ってきた同社。2009年の家電リサイクル法改正のときも、機種の追加に見合った処理方法の開発に力を入れてきたということです。
現在は三菱電気系列の兄弟会社グリーンサイクルシステムズに回収したプラスチックを売却し、三菱製品でのリサイクル部品再生の一翼を担っています。
本社工場の中にあるリサイクル部門、東浜リサイクルセンターで、どのような取り組みが行われてきたのかを見ていきましょう。
同センターの扱い品目は、家電リサイクル法対応品目(全体の75%)と産廃処理許可によるOA機器(全体の25%)、一部自治体が回収した一般廃棄物中の小物家電(ごく少量)です。年間約6万tを処理しています。以下のような特徴があります。
同センターでは使用済み家電を手解体や機械で素材別に選別し、鉄、非鉄金属、ガラス、プラスチックなどの素材を加工販売する専門業者に売却しています。フロンなどの有害物質を手解体で徹底的に除去し、無害化処理を行い、埋め立て処分場への排出を極限まで減らすという方針です。2010年度は総処理量6万tに対して0.2%の埋め立てに抑えたそうです。
工場には、ほとんどの工程ごとに粉じんを吸い取る空気清浄機が設置されているため、従業員は作業中でも粉じんを吸い込むことがありません。また、工場内、屋外に清掃の従業員が配置され、敷地内は工場内も含めちり一つ落ちていません。
手解体の効率化、最適化、自動化の推進、回収物品位の向上などにより、リサイクル費用を低減。
二槽式、全自動、洗濯乾燥機一体型、ドラム式など、いろいろな機種があるため解体ラインが作りにくいことから、オフラインで手解体後に破砕機にかける方式で効率化をはかっています。ドラム式の洗濯機は全自動洗濯機の3〜4倍の人出がかかります。乾燥機付きの洗濯機はバランサーの塩水排除が必要で、手間と技術が必要です。
●冷蔵庫ノンフロン冷蔵庫の引き取り数が増加しているため、ベルトコンベアで流れ作業にするインライン化を検討中。
●テレビ薄型テレビは台数が少ないことと、ねじを外すという作業が多いため、一人で一台全部を解体するセル方式をとっています。ブラウン管テレビは地デジ完全移行とエコポイントの効果で大量増加必至であることから、テレビ専門リサイクルの新工場を立ち上げて対応していますが、年度後半は激減が見込まれます。こうした需要の変化への対応が難しい段階にあります。
●エアコン冷媒の回収効率改善に取り組んでいます。7割が手解体です。
同社はリサイクルの工程を、すべてを素材にもどすという意味で「素材化プロセス」と呼んでいます。まず、家電を手で分解して素材別に分けられるものを分け、多種類の素材が組み合わさったものは2台の破砕機で破砕します。砕かれた破片の大きさで3つに分け、風力選別、複数回の磁力選別、非鉄選別を行い、異物の混入しない素材に分けていきます。
次にプラスチック残さを、プラスチックの比重や性質の違いを利用して、水・塩水による浮沈選別、風力選別、静電選別にかけます。
また、近年、プリント基板搭載の製品が増え、はんだに鉛が使用されているため、有害物除去も目的の一つとした基盤回収システムをつくり、基盤の機械選別をしています。
こうして回収された素材の回収量は 次のグラフのようになります。
同社の考え方としては、家電リサイクルの場合、プラスチックは手選別を中心に素材別に選別することが比較的容易であるため、マテリアルリサイクルが有効ということです。高炉還元剤での再利用は、エアコンのフィルター、OA機器で出るガラス入りのプラスチックのような一部のものだけで行っています。
マテリアルリサイクルは三つの方法で取り組まれています。
ここには、いろいろなプラスチックの種類が混ざっており、細かい金属も残っているため、同センターは微破砕システムで、アルミのシールやウレタンなどわずかな付着物も除去して、板状にして売却しています。難燃剤が加えられたプラスチックも選別して集められ、売却されることにより、99%の再商品化が達成されています。
「家電はメーカーの努力でねじの数を減らすなど、製造時点での工夫が行われていますが、まだ、徹底されているとは言えません。プラスチックは、同じ部品でもいろいろな種類の素材が使われていることから、いかに高純度の選別が行えるかがポイントで、我々もその努力を重ねています。幸い、分別素材の売却先も三菱電機の子会。リペレット製品はまた三菱電機に戻るということで、自分の工場で選別した素材が確実に新製品の部品に使用されていることが分かります。それが従業員の労働意欲にもつながり、定着率の高い職場が維持できているのだと思います」