特集
施行後10年を経過した「容器包装リサイクル法」の見直し
審議のポイントと課題──郡嶌 孝教授に伺いました

 「容器包装リサイクル法」(以下「容リ法」と略)が施行されて10年が経過、その間、廃プラスチック類(PETボトルを除く)の減量とともに最終処分場での廃棄量も減少するなど、一定の効果があったことは事実です。

 反面、現在の費用負担方法でいいのか、より効率的なシステムのあり方など、さまざまな問題も顕在化してきました。

 このため、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会(経済産業省)が、審議を重ねた内容を「容リ法見直しの方向性」としてまとめ、これに基づいた「改正容リ法」が6月9日、成立しました。その主な内容は、排出抑制に向けた取り組みを柱に、自治体・消費者・事業者がどのような役割を担いながら連携すべきか、事業者に対しては拡大生産者責任(以下「EPR」と略=解説参照)の考え方の検討、自治体の分別収集に係わる費用(コスト負担)拠出制度の実施、自治体が負担する費用の透明性や効率性の確保などです。

 そこで、小委員会の座長を務められた郡嶌孝先生(同志社大学経済学部教授)を大学に訪ね、お話を伺いました。

以下は、その要約です。

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見直しの方向性──関係者は「何をすべきか」を考えることが大事

 今回の見直し(今後のあり方)は、容リ法の中の「施行後10年を経過した時点で、その内容を見直す」との附則に基づいたものだ。

 見直しの背景には、10年を経過した容リ法そのものの評価と課題の抽出、特に3Rのうち排出抑制(Reduce)や再利用(Reuse)といった上流対応をいかに進めるか、国内関連法との整合性や消費社会の変化を踏まえた議論の必要性、海外動向を見極めつつ容リ法が国際的にどのような貢献ができるかなど、循環型社会形成のために再整理する必要があった。

 この作業の過程で見えてきたのが、(1)3R、特に排出抑制をどのように進めるべきか、そのために消費者と事業者がどのような「場」で協力関係を醸成することが望ましいか、(2)分別収集やリサイクルに要する費用について、公平性を含めた効率的な活用を進めるためにどのような負担形態が望ましいか、(3)自治体・消費者・事業者が循環型社会形成のためにどのような連携をすることが望ましいか、などだ。

 その結果、製品のライフサイクルに係わっている全ての人びとが、それぞれの立場で「何ができるか」「何をしなければならないか」という方向性を示すことが、特に重要だと考えた。

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議論の主な内容──3R、費用負担のあり方、関係者の連携が重要

 今回の見直しでは、リサイクルだけについて議論したわけではない。容器そのものは利便性が高いのだから、単なる使用抑制は非現実的だ。

<3R、特にReduceが重要>

 容リ法の根幹を成すのが3R(Reduce、Reuse、Recycle)。中でも排出抑制(Reduce)は環境負荷低減に向けた重要な柱として、見直しの方向性の中に盛り込んだ。また、事業者としての生産関係企業(生産・加工=上流)に対しても、自治体と連携しながら排出抑制のための多様な取り組みの必要性を強調した。同時に、消費者の立場から「何をすべきか」についても言及した。例えば、自主的な集団収集(集団回収)や事業者との協力関係の醸成などだ。

 また、自治体による分別収集にしても、今回の見直しを契機に各種ルート(民間ルートなど)の可能性も検討した。

 いずれにしても、目的と手段が関係する中で、上流対応としての排出抑制および質の高いリサイクルと再商品化の方向性を明示できたものと考えている。

<費用負担のあり方>

 議論になったのは、自治体が負担する費用の中身だ。自治体が行っている分別収集ルートはリサイクルを支える重要な役割を担っている。しかし、かかった費用の中身をみると実に多様で、同じような分別収集システムでありながらそれぞれの自治体によって異なる。これは、地域社会の事情や環境が異なるのだから当然の結果で、これを比較しても、あまり意味があるとは思えない。

 しかし、自治体が負担する費用内容(構成と費用)の把握と公開は、効率的なシステム作り、経済性の追求にとって重要なポイントと認識していたが、

・会計方式の相違
・自治体が費用の公開に消極的だった

ことが議論を進める上でハードルとなった。

 企業会計方式ならば、減価償却への対応や費用対効果、目標達成率などを容易に検討できるが、自治体の場合は公会計方式(費用の発生主義会計)を採用しているため、費用の中身の比較や費用効率の明確化ができない。これが、一つの課題として残った。

 こうした経緯があって、費用の中身を分解するためのフレームワークを立ち上げることが考えられたが、議論はそこまでで進まず、残念としか言いようがない。

 リサイクルシステムとそれに係わる費用が情報として公開されていれば、どのような方法が最もその地域にマッチしたシステムかの議論も起こり、費用の低減化につながる可能性もあったのではないかと思っている。

 もう一つは、分別収集やリサイクルに係わる費用の負担が現状のまま(自治体中心)でいいのか、という議論だった。この問題に関しては、EPR(処理費用の全てではなく、状況によっては部分的な負担)を実施することによって排出抑制や自治体の負担減がどの程度見込めるのか、EPRの実施に伴って発生した費用の一部を製品に転嫁した場合に消費者はどう反応するのか、に関する議論を進めたものの結論は得られなかった。

 EPRの目的に、容器のデザイン変更や素材の減量に言及した部分もあるが、これに対して事業者側は、既に容器の肉薄化を実施しており、さらにデザイン変更となれば容器の役割を果たせなくなるという反論や、自治体による分別収集費用を仮に事業者側が負担したとしても、単なる費用の付け替えにすぎないとの主張もあった。これに対する実証的な反論はなかった。

 結局、EPRにも限界があるとの認識が大勢を占めたものの、利害関係者が議論することによって、主体的な取り組みと連携をしながら社会的費用を軽減する方向を目指して、費用の負担方法、費用の低減方法などを考えていくという、一定の方向付けができたものと考えている。

拡大生産者責任=Extended Producer Responsibilityの頭文字を取ってEPRと呼んでいる。公害防止、製品の安全性への責任に加え、環境負荷低減とリサイクルの推進のために企業の負うべき責任範囲が拡大(ライフサイクル全体)された。その中身は、リサイクルを前提にした製品設計、製品に関する環境情報の公開、廃棄製品の回収責任、リサイクルや処分費用の負担など。生産者がこの全てを負うのが完全責任(Full  Responsibility)、自治体や消費者が責任を分担する場合を部分責任(Shared Responsibility)という。

<関係者の連携>

 容器包装のライフサイクルに係わる全ての関係者が、自らの問題として自主的に取り組み、そして連携するにはどのようなフレームが望ましいか、どのような協議の場が必要かについて議論をした。

 消費者側が主張する「完全なるEPR」を実施したとしても、費用がどのように変化するかについてのデータがなく、議論がかみ合わなかった。むしろ課題解決のために「自らができること」にそれぞれの関係者が取り組み、可能であるならば静脈のサプライチェーン(供給者から消費者までを結ぶ一連の業務)の中で複数の関係者が連携することによって生まれる相乗効果のほうが、リサイクル全体にとって有益だという考え方が支配的だった。静脈のサプライチェーン・マネージメントは今後とも重要になろう。

 これらの内容は、今後のリサイクルに係わる社会的費用の負担問題や自治体・消費者・事業者が連携または多様な取り組みの自主的実施によって有効な方法が見えてくるのではないかと期待している。

 さらに、消費者が自ら取り組むべき問題に関する動機付けと理解促進という枠組みを提言できたことは、容リ法の新しいあり方を示唆したものと考えている。

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見直し後のあり方──消費者も排出者としての責任を考える時期

まず、現状と効果に対する認識では、

・容リ法に基づく分別収集を行っている自治体は増加傾向にある
・一般廃棄物最終処分場の逼迫緩和などに一定の貢献をした
・国民が分別排出することによって環境問題への意識向上が図られた

というプラス評価の反面、

・再商品化では分別収集されたプラスチック類の品質にばらつきがあり、リサイクルの費用効果を低下させている
・分別収集に係わる社会的費用の負担感は増大している

というマイナス評価もある。

 審議の冒頭、消費者側からEPRの実行が主張され、事業者側からは今以上の費用負担は難しいとの立場を明確にしたため、これを踏まえ、審議する上で二つのアプローチを示した。

 (1)互いの利害に関する調整をするのではなく、市場メカニズムの中でそれぞれが相応の負担をすべきであって、政治的に解決すものではない、(2)互いに利害が伴うだけに、科学的根拠(知見)に基づいた冷静な議論をすべきだ、というアプローチだ。しかし、科学的根拠に関しては、事務局(経済産業省)による資料以外に委員にも提供を呼びかけたが、残念ながらほとんど示されず、今後の課題として残った。

 重視したことは、海外の法制度や動向を見極めつつ、容リ法が国内的および国際的にどのような貢献ができるか、環境負荷低減のために製品のライフサイクルの中で、係わりを持つ全ての人々が責任を共有し、消費者も排出者としての責任を負う(主体的取り組み)という再帰的社会(解説参照)の形成ということだった。

 見直し議論の中における再帰的社会の考え方は、PDCAというサイクルが基本となる。目標を設定し、計画に基づいて3Rを実施し、計画通りに進んでいるかどうかをチェックし、見直しを行うという一連のサイクルを全ての関係者が継続的に実施するというものである。全ての関係者が、まず自らの問題として内在化し、主体化して「自己決定」し、「自己責任」を果たすことを前提にした考え方である。

 その上で、自治体・消費者・事業者が互いに連携することによる相乗効果へ結びつけることに期待を込めた議論だった。

<PDCAの概念図>

再帰的社会(Reflexive Society)=再帰的近代化とも言われ、アンソニー・ギデンズ(イギリス)、ウルリッヒ・ベック(ドイツ)などの社会学者が提唱した概念。伝統の本質を分析した上で、今までの近代化を乗り越えるために脱近代化するのではなく、近代化に依存することによってさらなる近代化を生み出していくという「再帰的」な考え方。こうした過程の中で、個人も常に自分の行為を捉え直している(再帰)、と指摘している。環境問題が発生したのも近代であり、豊かさをもたらしたのも近代である。しかし、豊かさはその基盤である環境問題を発生させるし、豊かさそのものも持続可能なものではない。近代が「環境保全と豊かさ」を両立させるには、それぞれの主体が環境問題を内在化し、主体的に取り組む「主体化」が必要になるという主張。

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海外の動向は──注目したいEUの「テーマ別戦略」

今回の審議過程で重視したのが海外の動向だ。ここでは2〜3の例に言及したい。

 EUには「テーマ別戦略」があり、今後10年間におけるEU圏での廃棄物リサイクル政策の方向性を示したビジョンでもある。

 主な内容は、(1)リサイクルの目標率設定を含め、上流でのさらなる減量率や再使用率を明確にする、(2)枯渇性資源から再生可能な資源へ、生分解性プラスチックを含めた植物由来の資源利用へそれぞれシフトする、(3)製品のライフサイクルに係わる全ての人々が「何をすべきか」または「何ができるか」への方向性を示したものとなっている。

 中でも注目されるのが、「プラスチックの品目別リサイクル」から「プラスチックの素材別リサイクル」への転換だ。これが実施されれば、少なからず日本へも影響を与えることになる。

 またオランダでは、政府のやるべきことは企業との協議であるとの提案をしている。その上で、消費者とのコミュニケーションによって理解促進を図りながら自主的な取り組みに係わってもらう、これがオランダの掲げる主体的政策だ。「自ら何が問題か」を考え、「自らその問題に気づき」、「自らその問題に取り組む」ことによって「自らを変革」させなければ、表向きの制度では何のインセンティブにもならない、というのが主な柱になっている。

 一方、ヨーロッパと日本の国民性の違いが、環境問題解決の面でも影響している。ヨーロッパを見習うべきことも多々ある。

 スウェーデンの自動車メーカーは、「あなたが変われば、周りがその意味を理解し、評価に結びつき、周りの環境が変わる。そのことによって社会も変わる」との標語を掲げている。日本では、「自分一人ができることはたかがしれている」という発想になってしまうが、環境問題を解決するためには、まず自ら問題に取り組むという「自己責任」の発想が重要だ。政策的に取り組む場合、国民の常識の温度差やライフスタイルの多様化によってその有効性に限界があるにしても、主体的取り組みの必要性に対する理解がヨーロッパで進んでいる背景を物語ったものだ。

 また、欧米では、社会の60%の人が納得して行動すれば「成功」だと考えるのが一般的だ。しかし日本は、自分の主張に従ってパーフェクトに近い状況を求める(自分の主張が通れば評価されるが、社会的観点からの評価はされにくい)。したがって、容リ法の見直し議論の中では「60%論」が通用しにくい雰囲気があった。完璧な解決の前に、少しでも前に進める「改善」が必要なのではないだろうか。

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5年後の見直しに向けて──関心が高まるサーマルリサイクルの位置づけ

今までは効果を重視するあまり、自治体に依存する割合が高かったが、今回の見直しを契機に費用の負担問題、収集およびリサイクルに係わる各種ルートの可能性に配慮しながら、5年後に再評価されることになる。

 その中で注目したいのが、限定的あるいは補完的なサーマルリサイクルの位置づけだ。ある程度の実績があるわけだから、リサイクル手法の一つとして認められる可能性は高い。サーマルリサイクルが、LCA的に見てどれだけ環境負荷低減につながっているのか、などの科学的知見からの議論を重ねることになるだろう。

 特に「その他プラスチック類」のマテリアルリサイクルが、本当に意味があるのかどうか、現在の分別収集によって高度なリサイクルに貢献しているのかどうか、鉄鋼業界が進めているケミカルリサイクルとの関係はどうか、などの議論も必要になる。

 もう一つは生分解性プラスチックにどう対応するかが論点になる可能性が高い。

 また、事業者・自治体・消費者による「自主的取り組み」や「連携」に関するさらなる議論を進めるにしても、消費者の参加が欠かせない要件になる。企業の社会的責任を果たす上で重要なステークホルダーダイアログ(関係者による対話)と同じ形になるが、共通の「場」を作るという一体感の醸成が重要になるだろう。

 OECDが各国に求めているのは、環境負荷低減のために政策立案または制度設計の段階で効率的な費用の活用と、環境に有効的な改善の展開だ。そのためには、客観的に評価ができ、かつ精査できることが重要だとしている点。

 その意味で、今回の見直しは社会を巻き込んだ議論の第一歩になったと考えているが、5年後の再評価に期待したい。

 なお、今後は家庭での家庭系有害廃棄物管理も問題になる。有害物質用(薬剤など)の容器包装類の取り扱いや管理をどうするかなど、これまで手を付けられなかったことにも取り組まなければならないだろう。

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参考資料



引き取り市町村数推移(実績)
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市町村からの引取量(実績)
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