特集
自動車リサイクル法、施行後1年3ヵ月の状況
 ──ASRの処理は268万台分
そのリサイクルを下支えする同和鉱業(株)岡山工場
 ──関心が高まる製錬技術の活用

自動車リサイクル法が施行(05年1月)されてから06年3月末で1年3ヵ月が経ちました。対象となる自動車のうち、年間約500万台前後(うち約100万台が中古車として輸出されている)が使用済み自動車(廃車)として発生、この処理を法に基づいてシステム化し、環境負荷を低減させようというのが狙いです。

05年1月から06年3月までの状況を見ますと、約400万台と見込まれた使用済み自動車でしたが、リサイクルの指定3品目のうち、自動車シュレッダーダスト(Automobile Shredder Residue 以下ASRと略)の処理台数は約268万台で、当初に見込み台数に対しては67%となりました(データは(財)自動車リサイクル促進センターの「自動車メーカーへの支払い状況」に基づく)。

こうしたASRのリサイクルを下支えする大手企業の一つが、同和鉱業(株)岡山工場。同社は、永年にわたって製錬の独自技術を蓄積、その技術を流用したASRサーマルリサイクルプラントが注目されています。今回は、その稼働状況を取材しました。

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(財)自動車リサイクル促進センターが支払ったASR処理費用は157億円

05年1月から06年3月末までの期間に、リサイクル料金(預託金)をユーザーが支払った台数の合計は約4,944万台で、その構成を見ますと新車登録時が約15%、車検時が約79%、引き取り時(廃車時)が約6%、支払った金額の合計は約4,702億円で、支払った時期別では新車購入時が約17%、車検時が約78%、引き取り時が約5%となっています。

また、同時期におけるリサイクル3品目の引き取り状況を見ますと、ASRが約268万件、エアバック類が約44万件、フロン類が約205万件で、自動車メーカーに支払われた処理費用はそれぞれ157億円、8億円、43億円でした(データは(財)自動車リサイクル促進センターの資料による)。

自動車は登録制のため、車検手続きや使用済みとする場合でも廃車手続きが必要となり、こうした面からリサイクル制度の浸透がスムーズにいったとする見方が多いようです。

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同和鉱業(株)は循環系ビジネスに大転換

使用済み自動車は、解体されてエンジン、シャーシー、トランスミッション、タイヤ、バッテリーなどの鉄・非鉄金属類、触媒は別途リサイクルされ、その実効率は約80%に達し、残りの約20%のASR(年間約70万トン)をいかにリサイクル(再資源化)するか、そのための技術開発に多くの企業が取り組んできました。

その中で同和鉱業(株)は、製錬技術を流用したASRサーマルリサイクルプラントを岡山工場に建設し、有価金属と蒸気熱を回収するという点で関係業界から注目を集めています。

同社は、1884年(明治17年)に創業、不純物を多く含んだ複雑硫化鉱から貴金属、銅、亜鉛などの有価金属を製錬する事業を継続しながら、1975年代(昭和50年代)以降は、この製錬技術をベースに電子材料、めっき(鍍金)を含めた金属加工、金属表面の特殊加工、熱処理などの分野に事業を拡大しつつ蓄積した全ての技術を集約、2000年(平成12年)には各事業本部をカンパニー制にしたのに伴い、エコビジネス&リサイクルカンパニー(環境・リサイクル)の事業展開が始まりました。05年に本格稼働を始めたこのASRサーマルリサイクルプラントは、その象徴的存在です。


<パンフレット「同和鉱業は4つの技術分野に貢献」の循環系ビジネス図>
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このカンパニー制の導入によって、製錬(資源開発と地球資源の有効利用、非鉄金属や貴金属の製錬)→金属加工(高機能銅合金、金属・セラミック基板など)→電子材料(高密度磁気記録メタル粉、高純度金属化合物半導体など)→熱処理(各種熱処理、めっき加工)→環境・リサイクル(資源リサイクル、産業廃棄物処理、家電・OA機器のリサイクル、ASRのリサイクル、環境コンサルタントなど)のサイクルを形成、各分野を担当する部門がそれぞれの役割を果たしながら、環境負荷を限りなく低減するという循環系ビジネスへ大きく転換、関係業界の関心が高まっています。

今回の取材では、この循環系ビジネスのうち環境・リサイクル分野を中心にまとめました。

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製錬技術を生かし、岡山工場はASRサーマルリサイクルを実現

同社の流動床炉は、自動車リサイクル法に対応(認定設備)したもので、法の施行と同時に本格稼働を始めました。この岡山工場でのASR処理プラントの稼働によって、ASR(廃プラスチック類は、主に内装材、シート、クッション材など)の処理は、東北の小坂製錬(秋田県)と西の岡山工場の2拠点となりました。

これらASRを含むシュレッダーダスト(以下SDと略)の処理能力は、小坂製錬が月間4,400トン、岡山工場が同3,000トンですが、同じ流動床炉でも、小坂製錬の場合は焼却後の残渣(ざんさ)を自溶炉(製錬工程)に投入することで、銅などの非鉄金属を製錬回収しています。

これに対して岡山工場は、塩素濃度の許容量を3〜7%まで上げたために排ガスの処理工程を強化したこと、製錬工程がないためにSDの前処理が必要、という二つの点で小坂製錬と異なります。


<岡山工場のASR処理プラント>
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<ASR>
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以下は、岡山工場のASR処理プラントの概略ですが、まず前処理では、破砕のほか一部混入している鉄、アルミ、銅、ガラス類を選別回収します。この前処理の効果として、有価物・不純物を事前選別で取り除くことにより、流動床炉内でのクリンカー(溶塊)の発生を抑制し、流動床炉の効率的長時間連続運転(約3ヵ月の運転が可能)を実現することができる、などが上げられます。

その理由は、クリンカーが発生して炉内に落下すると流動バランスが崩れ、硅砂(流動砂)の働きに影響を与えるほか、流動床炉そのものが機能しなくなり停止してしまうからです。この発生抑制のための改善こそ、最も重要なノウハウで、同プラントの大きな特徴になっています。

もう一つの特徴は、流動床炉に投入するSDの量を常に一定にしていること。通常、発電に蒸気を利用する場合、蒸気量を一定にするためSDの処理量を増減して調整しますが、岡山工場ではその逆。


<「環境・リサイクル」の右側、「処理の流れ」のフロー>
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プラントに設置されたボイラーによる蒸気温度は350〜400℃。この蒸気熱は、全て回収されて工場の熱源とし、余剰分を発電用に供給しているため、発電量にはバラツキがあるものの使用電力量のうち40%前後をまかなっているとのことです。つまり発生した蒸気は、ほぼ100%工場内で使用していることになります。

破砕・選別が終わったSDは流動床炉に投入して焼却しますが、発熱量は3,500〜4,000kcalだそうです。焼却する流動床炉内の温度は600〜650℃(硅砂使用)、二次燃焼室の高温ガス(900〜950℃)でボイラーを加熱したあと、400℃くらいになったガスを急冷・減温塔で約180℃に下げます。排ガスは、バグフィルターで灰を捕集したあと排出されます。この捕集した灰に関しては、セメント混入材として利用できないか、現在検討中だそうです。

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ASRの安定的引き取り量の確保が課題

岡山工場は、2つのグループに分かれている自動車メーカーから委託を受けた自動車リサイクル代理店と、ASRの年間受託量と年間受託処理単価について契約を締結しています。この契約に基づいて、それぞれのグループの代理店が、自動車破砕業者(ASR排出元)に対して岡山工場へASRを搬出するように指示を出します。荷姿は破砕された状態で、全てトラックによって岡山工場に搬入されます。

SD処理能力を見てみますと、前処理である破砕・選別が1時間当たり約15トン、月間にしますと約1万1,000トン(ASR以外も含む)、焼却が1時間当たり約4トン、月間にしますと約2,800トンですが、その全てがASRというわけではありません。

現状、ASR発生量が当初見込みよりも少ないこともあり、各プラントに委託される量も少なくなっています。岡山工場にもその傾向はあり、ASR以外の処理物を手当しながらの操業とならざるを得ない状況です。

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※同和鉱業は10月1日から新社名に

同和鉱業(株)は、今年10月1日に現在のカンパニー制からホールディング制へ移行します。これに伴って各カンパニーをそれぞれ分社化し、法人格を持つことになりました。

新体制では、DOWAホールディングスの傘下に、分社した各カンパニーが事業会社として入ることになります。今回の取材窓口になりましたエコビジネス&リサイクルカンパニーは、DOWAエコシステム(株)になり、岡山工場内のリサイクル課は、エコシステム岡山(株)として独立、DOWAエコシステム(株)の傘下企業になります。

社名、所在地、電話番号は以下の通りです。

DOWAエコシステム(株)
〒101─0021
東京都千代田区外神田4─14─1 秋葉原UDXビル 2F
TEL 03(6847)1234  FAX 03(6847)1243

エコシステム岡山(株)
〒702─8506
岡山市海岸通1─3─1
TEL 086(262)1121  FAX 086(262)1033

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