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ごみをもってごみを制す・・三重県廃棄物処理センターの事例から埋め立て処分量の削減、リサイクル率向上へ向けた溶融処理による新たなごみ処理の提案

一般廃棄物中のプラスチックは、容器包装リサイクル法により、リサイクル率が年々高まっています。しかし、資源として再利用できるプラスチックが埋め立て処分されている、マテリアルリサイクルに適さない廃プラスチックが高コストでリサイクルされているなどの問題もあります。 こうした中、環境エンジニアリング分野大手の株式会社クボタは、廃プラスチックの効率的な活用を目指して、技術開発およびシステム開発を進めています。そこで、同社の混合溶融処理技術を採用している三重県廃棄物処理センターの取材を通して、廃プラスチックの有効活用について考えてみました。

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現状のごみ処理の問題点

株式会社クボタの環境リサイクルプロジェクトチームは、廃棄物処理の現状について、全体的な廃棄物、お金の流れとプラスチックの流れについて、各所から公表されている統計データを基に、詳細な分析を行いました。

現状のごみ処理システムでは、廃棄物のリサイクル率は約20%となり、容器包装プラスチックは、「ペットボトル」と「その他プラ」に分けられ、リサイクルのルートに載せられています。

しかし、以下のような問題が残されていることを指摘しています。

これらの問題点を解決し、より効率的、安全に、循環型社会に向けた取り組みを行うためには、ごみ処理の最適化が必要であり、自治体の負担をこれ以上増やさないためにも、「マテリアルリサイクルに適さない廃プラスチックはサーマルリサイクルすべきである」というのが、プロジェクトチームの出した結論です。

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廃プラスチックのサーマルリサイクルによる溶融処理

すでに、全国には、ダイオキシン類の低減対策や埋め立て処分場対策として、ごみ焼却施設に溶融炉が併設されている例が多く見られますが、そこにもまだ、問題があります。

ランニングコスト、とくに燃料のコスト割合が高いことや、溶融した固形物が、品質の問題から再利用できないことです。

これらの問題、中でもコストの問題をどのように解決するか、という点から、クボタが開発したのが、可燃物混合溶融技術です。

可燃性の固形物を、焼却残さ(灰)などの燃えないものと混ぜて溶融炉に投入することにより、可燃物が溶融の熱エネルギーとなって、従来の化石燃料使用を低く抑えることができるというのが、この溶融炉の最大の特徴です。また、埋め立てられたはずの残さに残るダイオキシンや重金属類などを、溶融処理することにより、ダイオキシン等の有害物質を無害化し、残さを有効資源化することができます。「その他プラ」をすべて溶融燃料にすると、容器リサイクル法関連で排出されている年間CO2排出量も15万tから11万tに削減できる計算になります。

自治体のごみ処理費用は、容リ関連費用、最終処分場への埋め立て費用と溶融費用が相殺され、全体の費用が増えることはありません。

クボタの環境リサイクルプロジェクトチームの考え方は、まさに、「ごみをもってごみを制する」というものでした。

<株式会社クボタが提案するごみ処理(リサイクル)フロー>

同溶融炉を採用している三重県の廃棄物処理センター(財団法人 三重県環境保全事業団)は、2002年(平成14年)に四日市市で営業開始されました。

ここでは、県内22の各市町村のごみ処理施設からでる一般廃棄物焼却残さ(焼却灰、ばいじん)と、県内の94社から発生する産業廃棄物を処理しています。その量は、2008年度で、一般廃棄物の焼却残さ等4万4000t、産業廃棄物7000t余りになります。産業廃棄物には、下水汚泥、有機性汚泥、廃プラスチック類などが含まれており、廃プラスチックから回収されるエネルギーは溶融炉の燃料として活用しています。可燃物を投入することにより、約25%の燃費削減効果が得られるということです。

また、溶融炉から出る廃熱は蒸気タービン発電機の蒸気発生に活用され、発電された電力は施設で利用されています。

三重県廃棄物処理センターにおける可燃物混合溶融システムのしくみ
  • 一般廃棄物の焼却残さを30mm程度に篩い分けしたものと、産業廃棄物(廃プラスチック、タイヤなどのゴムくず類)を30-50mm程度に破砕処理したものとを混合して、溶融炉に投入する。
  • 廃棄物残さを回転式表面溶融炉で1300度以上の高温で溶融するため、ダイオキシン類を完全に99%以上分解処理できる。回転式表面溶融炉は、石臼の粉挽き機のように回転するが、中心面の空洞内でバーナーで炉を熱するしくみになっている。 
  • ガスは苛性ソーダ噴霧、消石灰・活性炭吹込み、ろ過式集塵機など排ガス装置で十分浄化し、環境への負荷を軽減している。
  • 産業廃棄物(廃プラ、タイヤなどのゴムくず類)を破砕処理し、空気を遮断したキルンで450度に間接過熱し、熱分解ガスと熱分解残さに変えるガス化ラインも備える。

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埋め立て量ゼロ、資源回収などに成果

可燃物混合溶融炉では、排ガス中に含まれている煤塵(溶融飛灰)と、スラグが生成されます。スラグとは、溶融処理したものを水中で急速冷却することによって、砂状になったものです。

スラグは破砕・粒度調整します。そして砂代替の資源として、コンクリートの二次製品用骨材や埋め戻し材として100%、県内で有効活用されています。年間3万t以上(2007年度)のスラグのうち、コンクリート二次製品に約31%、土木用資材に約64%が活用されました。

また、溶融飛灰は、精錬工場に送り、年間約170t(同年度)の鉛、カドミウム、亜鉛、銅などを回収しています。他の多くの溶融処理施設では、現在も溶融飛灰は埋め立て処分されていますが、非鉄金属精錬工程で金属回収する山元還元という方法をとることにより、有害物質の漏洩による水・土の長期的な汚染リスクの回避、溶融飛灰の有効利用も可能になったのです。

このような方法で、平成20年度末までに、県内の市町の焼却灰、飛灰27万2,000tを溶融処理し、これらの埋め立て量ゼロが実現されました。この量は、30万人規模の都市のごみ焼却施設から排出される焼却灰等を埋め立てたと仮定すると、25年分の埋め立て量に相当します。

自治体のごみ処理費用は、最終処分場への埋め立て費用と溶融費用が相殺され、全体の費用が増えることはありません。

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より広域かつ柔軟な処理システムの構築が課題

以上みてきたように、廃棄物の溶融処理は、埋め立て処理施設の延命、資源の回収促進などに極めて有効と思われます。しかし、溶融処理を促進し、そのメリットを十分に引き出していくためには、大規模処理施設による運用がより効果的です。

三重県廃棄物処理センターでは、年間を通じて正月休みを除き、ほとんど営業運転が続き、効率的な運営がされていますが、この規模(処理能力 240t/日)でも、昨今では厳しい経営となっているとのことです。その理由は、景気動向、マテリアルおよびケミカルリサイクルの促進などで、産業廃棄物としての廃プラスチックの集荷が減っていることが挙げられます。

こうした現状に対応するためには、容リ法上の「その他プラ」の中でも汚れがひどいプラスチック(マテリアルやケミカルでは効率が悪い、あるいはいい再生品が作れないもの)、可燃ごみや不燃ごみとして収集している廃プラスチックなどを溶融処理の燃料として生かすことが有効と思われます。そのためには、法改正(容リ法、廃棄物処理法などの改正)を伴う制度改革も必要だと関係者は話しています。各自治体におけるプラスチックの溶融処理施設等での燃料利用は、化石燃料の使用を減らす効果がありますが、現在の制度では“リサイクル”にカウントされません。

一方、汚れのひどい「その他プラ」も、容器以外の塩ビ等を含む廃プラスチックも安全に処理できる施設があるにもかかわらず、そうした施設の利点が十分生かされていません。

また、溶融処理施設の安定経営を実現するためには、行政区域に縛られない広域処理も必要になるでしょう。これも法制度改革を含めた新たなシステムづくりができるかどうかにかかってくると株式会社クボタでは考えています。

多くの生活者は、家庭から出るプラごみについて、今のままでよいのか、という疑問をもっていますが、最終処分まで考えてどのような方法がよいのか、考えなければならない時代になっていると感じられる取材でした。

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