特集:2011年5月掲載
すべての廃プラスチックを収集する苫小牧市
 「市民に分かりやすく、地域完結型循環を目指す」


一般廃棄物のうち、廃プラスチックを資源ごみとして集める自治体が増えてきました。しかし、その分別や処理の方法は自治体によってさまざまです。北海道苫小牧市では2010年4月からPETボトル以外のすべての廃プラスチックを資源ごみとして一括収集(全プラ収集)し、民間力を活用して理想的な処理体制を追求しています。私たちプラスチック情報局は、2011年3月末、苫小牧市を訪れ、市と市のごみ処理を受託した二つの民間会社に現状をお聞きしました。

「全プラ収集」を決めるまで

苫小牧市は人口約17万人で、新千歳空港と苫小牧港のダブルポートを有する北海道有数の工業都市です。

2010(平成22)年3月、苫小牧市は今後15年間のごみ処理のあり方を見据えた「一般廃棄物処理基本計画」を策定しました。

同市は2002(平成14 )年に策定した「苫小牧市一般廃棄物処理基本計画」以降、ごみの減量に力を入れ、2007(平成19)年には市民に「053(ゼロごみ)大作戦」を呼び掛け、さまざまな取り組みを進めてきました。この「ゼロごみ」は苫小牧市役所の郵便番号053にちなんだネーミングです。幼児教育向けのオリジナルヒーロー「環境戦隊053(ゼロごみ)ファイブ」の出前アトラクションなども行われてきました。そのかいあって、1 人1 日当たり家庭ごみの排出量716g、リサイクル率13.1% という当初の計画目標を達成することができました。

しかし、より一層のごみ減量やリサイクルに取り組む必要があることから、2010(平成22)年を初年度とする新しい基本計画として、「053(ゼロごみ)のまちとまこまい」を基本理念に、H26年度家庭ごみの目標を1人1日当たりの排出量550g、リサイクル率28% と策定しました。背景には、苫小牧市がそれまで分別収集で他市に遅れをとっていたという事情、事業系ごみも合わせると決してリサイクル率がよくないという事情もあります。

前の計画の段階では、苫小牧市ではビン、缶、PETボトル、紙パックの分別収集を行っていました。しかし廃プラスチックについては、食品系のものは可燃ごみとして収集し、食品以外のものは不燃ごみとして収集して、焼却あるいは埋立処分していたのです。

すべての廃プラスチックを収集する「全プラ収集」を導入するためには、集めた後のプラスチックをどう処理するのかしっかり考えておく必要があります。市では飯能市や宝塚市など、「全プラ収集」に取り組む先輩地域の視察も行いながら、具体的な収集方法や中間処理施設のあり方を検討してきました。

「全プラ収集」を始めた理由について、苫小牧市環境衛生部「053推進室」の若林義則室長にお聞きしました。

第一の理由は「市民にわかりやすいこと」であったといいます。

「まわりを見渡してみると、ほとんどの市町村は、容器包装リサイクル法に基づいて容リ法プラだけを資源ごみとして収集していました。しかし、住民の高齢化が進む中で、プリンの容器は容リ法プラ、スプーンは容リ法対象外のプラだと説明して、分けてもらうのは無理なんです」

それなら全部集めて分けたほうが早い、と市は判断しました。

「プラスチックは全体でどのくらい出るんだろう、そのうち容器包装以外のプラスチックの量は?と調べてみると、そうたくさんあるわけではないことがわかりました。それなら、市民にわかりやすい方法で、容リ法プラと容リ法対象外のプラは分けずに集めよう。分別の手間はそれほど変わらないだろうということで、踏み切りました」

2008年の調査では、家庭から出る可燃ごみのうち15.9%、不燃ごみのうち57.2%(その内プラ製容器包装は17.8%)がプラスチックでした。

もう一つの理由は、工業都市としての苫小牧市の条件を生かせば、プラスチックのリサイクルを「苫小牧市内完結型循環」で行うことが可能であるということです。

市としては、あくまで、容リ法プラは容リ協経由でリサイクルすることを基本にしていますが、リサイクル業者はすでに苫小牧市にあり、帯広市など苫小牧市以外の市の容リ法プラのリサイクルを行っていただけでなく、容リ法対象外のプラについてもいくつかの業者がサーマルリサイクルを中心にしたリサイクル事業を行っていました。

こうして、2010年度は容リ法プラと容リ法対象外のプラを一緒に集め、2011年2月までの11カ月間で1,700t(年間見込み2,000t)の廃プラスチックが集まりました。さまざまなパネルやポスター、出前講座などで市民への啓発を行った結果、市民の約7割が資源ごみとして廃プラを分別することに協力的でした。

そして、2010年4月からの半年間はRPF(廃棄物固形燃料)で実績のあった苫小牧清掃社に処理を委託、そこで出来たRPFは市内の王子製紙などの製紙工場でボイラー燃料として使用されました。また、同年10月からは明円工業に全プラ収集した廃プラの中間処理を委託しました。容リ法プラを分別し、処理残さ(容リ法対象外のプラ)はサニックスが発電用燃料として使用しています。このように中間処理以降の工程を民間に委託することと、リサイクルを地域内で完結することで、合理的で市民にも分かりやすい体制を築くことが出来たとのことです。

今後の市の計画としては、紙の資源収集などにより、ごみ減量化をさらに進め、5年後には焼却量を5万トン以下にすることを目標にしています。また、減量化を推進するために、ごみ有料化も検討中です。道内の市で家庭ごみが有料化されていないのは、富良野や岩見沢など4市だけということで、苫小牧市のごみ有料化に向けた取り組みが本格化するようです。

道内有数規模のRPF工場
一時は苫小牧市の廃プラも処理

株式会社 苫小牧清掃社
〒059-1372 北海道苫小牧市字勇払265番地30
リサイクルセンター RPF工場
処理能力 168t/d(7.0t/hr)

RPF開始の背景

苫小牧清掃社は廃プラスチックをRPFにリサイクルし、製造・販売しています。RPFとは廃棄物のプラスチックや紙、木などの可燃物を圧縮して成形し、固形燃料にしたものです。同社は主にポリ系(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン)の廃プラスチックや、木くず・紙くず・繊維くずを再利用しています。

道内にはRPF工場は十余りありますが、同社は中でも規模が大きく、処理能力84t/dの2ラインを有しています。現在は昼と夜の2交代制で、1万6千t〜2万t(内プラスチックは80〜90%)を処理しています。スーパーミラクルセパレーターと呼ばれる機械で、廃プラスチックから金属、小粒物(ガラスなど)、重量物(土砂・石など)を選別し、最後に木くずを混ぜて成型し、石炭同等のカロリーにします。

1993年に事業を開始した第一工場では、特殊な粉砕技術で木くずを8mm程度に粉砕して家畜の敷料を販売していますが、その際に出る細かい木粉もRPF原料として利用しています。

また、苫小牧市および近隣の自治体から可燃性の粗大ゴミの処理を受託しており、ベッドマット、ソファー、布団、カーペット、たたみなどもRPF原料として利用しています。

一方、北海道では農業が盛んなため、農業用フィルムの排出量が多く、適正処理、有効活用が求められていました。さらに近くでは王子製紙、日本製紙の工場がRPFをボイラー燃料として使用しており、1999年、リサイクルセンターにRPF工場を建設したのが始まりです。

そんななかで、苫小牧市の廃プラスチックの中間処理施設の開業が遅れていたため、2010年4月〜9月、苫小牧市の廃プラスチックを、暫定的に同社がRPFに処理することになったのです。

需要はあるのに原料が不足

同社はこうして半年間にわたり苫小牧市の廃プラを問題なく処理しましたが、一般廃棄物のプラスチックを処理する上での課題も見えてきました。これらには食品残さも含め塩分が含まれているため、製紙工場が設けているRPFの塩素分0.3%以下という基準をクリアするためには他の産業系廃プラも大量に必要になるということです。

森田雄二営業部長は「現在は処理能力を全面的に生かすための良質な廃プラスチックを多く入手するのが課題です。RPFは当地では需要があり、プラスチックの再利用法としても非常に有望だと思っています。今後は苫小牧市、道内のリサイクル推進に貢献するとともに、さらに高品質なRPFを供給したい(JIS化検討)」と話しています。

プラスチックの中間処理から材料リサイクルまで
斬新な事業モデルを追求する明円工業

明円工業株式会社環境資源部苫小牧工場
〒059-1362 北海道苫小牧市柏原6番277
廃プラスチック中間処理施設
処理能力 約14.000t/y

明円工業はプラスチック製容器包装の材料リサイクルにおける登録再生事業者で、国の審議会等にも委員を出している著名な会社です。環境資源部苫小牧工場は2002年に容器包装プラスチックのベールから再生樹脂ペレットを作る再生処理工場(第1工場)が、2005年にはそのペレットからプラスチック製品を作る成形化工場(第2工場)が操業を開始しており2010年の中間処理施設(第3工場)の完成でいよいよ“中間処理から材料リサイクルまでの一貫体制”というとても珍しい事業モデルができあがりました。

中間処理施設では、2010年10月から苫小牧市、安平町、厚真町の廃プラスチック処理を業務受託しています。設備費約3億円は苫小牧市が10年間の業務委託で償還することになっています。

この工場では混合の状態で収集された廃プラスチックを容リ法プラと容リ法対象外のプラに分離し、容リ法プラはベールにして指定法人である容リ協へ、それ以外のプラはフレコンでサニックスへ送られます。

工場はベルトコンベアでつながり、作業員により手選別で金属やラップなどの異物や不適物を素早く選別する工程と、光学式自動選別機や磁気選別機で自動的に選別される工程があります。光学式自動選別機は、プラスチックに近赤外線を照射し、光の解析によってプラスチックの種類を判別してエアーノズルの噴射で自動的に選別する装置です。

こうして異物や不適物が取り除かれて、容リ法適合のプラとしては90%程度が残ります。言うまでもなく、この工場の強みは中間処理後、ペレット化・再商品化が同じ敷地内でできるということです。

明円工業桜井輝彦工場長のお話

「中間処理施設の工程には今まで培ってきた当社の廃プラ処理技術が遺憾なく発揮されています。また、同一敷地内に原料化、再商品化の工場があるので横もちの輸送コストがかからないという合理性に加えて、我々自身が中間処理(ベール製造)から材料リサイクルまでの全工程にかかわることで品質管理の一貫性を保ちやすいというメリットが享受できます。今後も当社の技術を生かしてよりよい製品を作っていきたいと思います」

[ ひとつ戻る ]