2004.02.16
JFEスチール東日本製鉄所の総合リサイクル事業
JFEスチール株式会社は、グループ全体で総合リサイクル事業を展開しています。同社東日本製鉄所は東京湾をはさむ千葉地区と京浜地区からなり、臨海製鉄所としては世界最新の設備を誇ります。総費用約1兆円、世界最大の1万t級の港をもつ製鉄所ですが、中国の製鉄産業の発展に追われ、製鉄原料を廃棄物から作ることにより環境負荷の軽減とコストダウンをねらっています。
東日本製鉄所では、川崎市扇島地区に産業系廃プラスチックの高炉原料化施設を1996年から稼動させているほか、水江地区では一般廃棄物系プラスチックの高炉原料化施設、塩ビリサイクル工場、建設資材のNFボード製造工場、PETボトルリサイクル工場、家電リサイクル工場が稼動しています。これらは川崎エコタウンのリサイクル事業の中核をなすと共に、首都圏の製鉄所ならではの一貫リサイクルシステムの形成を目指しています。
総合リサイクル事業を展開
塩ビリサイクル工場
2003年5月から本格試験操業を開始した塩ビリサイクル工場では、使用済みの農業用フィルム、壁紙、建設用のパイプ、ラベルやカードのようなラミネート加工したものなど、塩ビ比率80%以上の廃棄物で、軟質・硬質塩ビを処理します。他素材との複合塩ビや、農業や建設などで使われ、汚れや劣化の激しいものもリサイクル可能なことが特徴です。
これを破砕・乾燥させてから、ロータリーキルンという回転式熱分解装置に入れ、外部からの熱風によって蒸し焼きの状態で塩化水素と炭化水素に分離して取り出します。27.1t/日(年間8000t規模)の処理能力を持ち、塩素は塩酸にして、鉄鋼、化学などの工業に、また炭化水素は鉄鉱石の還元剤として、どちらも100%有効利用されています。塩ビ処理量5000tの場合、塩酸は3000~4000tになり、一部は同社の熱延工場で薄板表面のスケールなどを洗浄するのに使われています。
工法について、詳細はケミカルリサイクルの項を参照。
家電リサイクル工場(呼称:JFEアーレック)
JFEスチールは、家電リサイクル法が施行された2001年4月1日を機に、水江地区に三洋電機、三井物産との共同出資でJFEアーバンリサイクル(株)を設立し、家電リサイクル工場を稼動させています。ここでは、同法で指定されたテレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機の4品目を一日約60t、リサイクルします。
三洋、三菱、日立、シャープ、ソニー、富士通ゼネラルを主体に、神奈川県と東京都下の一部から廃家電4品目が運ばれてきます。昨年度の実績では、全国で約1000万台が回収され、内6%をこの工場が処理したということです。年間130万台の処理能力があり、4品目以外の家電や、OA機器、自販機などのリサイクルも可能としています。
この工場の特徴は、徹底した手分解が行われていること。工場の敷地の多くが各品目の手分解ヤードとして当てられ、一台ずつ従業員が手で分解していきます。同社の福島副社長によると、異なった素材の多くの部品からなる家電製品は、各パーツを手分解して素材ごとに分類することによって、シュレッダーダストを減らすことができるからだといいます。
これによって回収された鉄、銅、プラスチックを同地区の製鉄工程で有効利用できるのが大きな利点となっています。家電リサイクル法で基準とされる再商品化率は50~60%を超えており、再資源化率では85%以上を維持しています。
たとえば、テレビはブラウン管をガラスカレットにしてブラウン管原料に、プラスチックは高炉原料に、コンプレッサーと熱交換機は非鉄精錬に、洗濯機のモーターは鉄と銅で出来ているので製鉄原料としてそのまま転炉に入れることができるという具合です。
また、冷蔵庫のドアについている塩ビのパッキンもマテリアルリサイクルに回されます。冷媒フロンと断熱フロンは回収され、無害化処理されています。
また、全工程を通して水を使わないため、排水を一切出さないことも同工場の特徴です。
稼動開始日 | 2001年4月1日 |
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年間処理能力 | 130万台 |
敷地面積 | 約8000m2 |
建屋面積 | 2700m2 |
主要設備 | 堅型破砕機、磁選機、非鉄選別機、ウレタン減容器、断熱フロン液化回収装置 |
破砕能力 | 79t/24h |
関連HP:JFEアーバンリサイクル
川崎ペットボトルリサイクル工場(KPR)
水江地区のJFE環境株式会社の川崎ペットボトルリサイクル工場(KPR)は、2002年度からペットボトルリサイクル事業を開始しました。京浜地区というペットボトルの大量排出地にもかかわらず、同地区内に大規模なリサイクル施設がなかったことから、地域への貢献が期待されての創業でもあったそうです。処理能力は年間1万t、ペットボトルにしておよそ2億本、再生フレークは約8000tにもなります。
ここでは、ベール品(使用済みぺットボトルを圧縮・減容し、俵状にしたもの)を解俵して、色付きボトルや異物などを手選別、X線選別した後、すべての工程を自動システムで処理しています。ラベル、キャップも粗粉砕、細粉砕したあと、重量の違いを利用して、脱穀機と同じ原理で分離します。水酸化ナトリウムと水による洗浄を行うため、純度が高く品質のよいフレークができることが特徴です。フレークは再生業者に販売し、ラベルやキャップなどの残渣物はほとんどがJFEスチールの高炉原料化で再利用されています。
また同社は、昨年9月から同工場隣接地に缶・ペットボトルの処理施設も稼動させており、1日最大38.4t(缶27.9t、ペットボトル10.5t)の機械選別、圧縮・梱包、保管を行っています。これは、川崎市北部地区で分別収集された缶・ペットを処理する事業の一環で、2013年3月までの10年間で年間計5500tを処理する計画です。
稼動開始日 | 2002年4月1日 |
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ペールの年間処理能力 | 1万t(約2億本) |
破砕力 | 48t/日 |
フレーク年間生産量 | 約7~8万t |
総工費 | 約15億円 |
敷地面積 | 約1万2000m2 |
建設資材・NFボード製造工場
JFEスチールは、グリーン建材株式会社の開発した建設資材、NFボードの製造を水江地区で行っています。
NFボードは、コンクリート建築に用いる型枠で、一枚の大きさは600mm×1800mm×12mm、重量約9kgです。原料は廃プラスチックで、一般廃棄物中の廃プラから塩ビを除去してマテリアルリサイクルされています。
表面が高剛性樹脂で補強され、中心が廃プラスチックを再利用した発泡構造というサンドイッチ形のボードは、水、薬品、汚れに強く、従来の建築現場で使われていた塗装合板と比較して非常に耐久性があります。塗装合板は3~5回の使用が限度でしたが、NFボードの場合、10回以上の使用が可能です。「中には20回使ったという業者の方もいて、売り上げ数が心配になるほどです」と鈴木工場長。ほかにも、合板と同じ工具で加工でき、切断、穴あけ、釘打ちも自由なため、合板との混合使用も可能、重さは合板とほぼ同じですが吸水率が0.05%未満なので雨が降っても重さが変わらない、コンクリートが付着しても簡単にふき取れるなどの特徴があります。価格は地域などによって若干異なりますが、ウレタン塗装したベニヤ合板とほぼ同等価格だということです。
さらに、NFボードが建築資材として優れているのは、回収・再利用ルートが確立されている点です。同工場で作られたボードはグリーン建材が工事会社に販売し、建設現場で使用された後は、再びグリーン建材または指定回収業者が回収してJFEの高炉原料として再々利用されます。2002年度より、建設リサイクル法が全面施行され、建設廃材を95%削減し再利用することが義務付けられましたが、再々利用できる建築資材は画期的な製品といえます。
稼動開始日 | 2002年9月1日 |
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年間生産量 | 200万枚 |
廃プラスチック使用量 | |
敷地面積 | 約5,000m2 |
総工費 | 約35億円 |
NFボードの問合せ先はグリーン建材株式会社まで
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