協会案内

ご挨拶

会長就任にあたってのご挨拶

一般社団法人プラスチック循環利用協会 会長 工藤 幸四郎さん

一般社団法人プラスチック循環利用協会 会長

工藤 幸四郎

この度、一般社団法人プラスチック循環利用協会の会長に選任されました工藤でございます。
就任にあたり、ご挨拶申し上げます。

当協会は1971年の創立以来50年以上にわたって、廃プラスチックのリサイクル技術の開発やリサイクル事業者への支援などの事業を通じて、プラスチックの生産から廃棄に至るまでの適切な社会システムの構築に寄与してまいりました。2013年4月からは、協会名を現在の「一般社団法人プラスチック循環利用協会」に変更し、プラスチックのライフサイクル全体での環境負荷の低減を通じて、循環型社会の構築とカーボンニュートラルの実現に寄与するために、廃プラスチックの循環的な利用やプラスチックの環境調和性に関する調査研究などの事業を推進しております。

グローバルに目を向けると、2022年3月に国連環境総会(UNEA5.2)において「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際約束に向けて」という決議が採択され、政府間交渉委員会(INC: Intergovernmental negotiating committee)に場を移して2024年末までに法的拘束力のある国際約束を作る精力的な国際交渉が続けられています。欧州や一部の発展途上国からは、プラスチックの生産や使用に関する規制的措置を求める声が強く寄せられております。当協会といたしましては、生産や使用といった入口段階の一律規制ではなく、廃プラスチックになった後のリサイクル対策の強化やフロー図などの取組の発展途上国への展開こそが必要であると考えております。INCでのグローバルなプラスチックに対する厳しい見方を実感し、プラスチックに関わる立場として身の引き締まる思いを持ちつつ、日本政府に対しての働きかけや情報提供を行うとともに、当協会の各国のカウンターパート組織との意見交換を進め、国際的な世論形成に尽力して参ります。

国内に目を転じると、当協会のコア事業であるフロー図の分析などによると、我が国では政府・自治体、関係業界、市民の方々など関係各位の弛まぬご努力により、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル(エネルギー回収)の合計での有効利用率は年を追うごとに増加し、今や87%に達するまでになっています。これは世界トップクラスに位置し、わが国のリサイクルへの取組意識の高さを示しているものといえます。
しかしながら、有効利用率の内訳を見ると、埋立などは減少しているものの、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルは近年伸び悩みの傾向にあり、エネルギー回収だけが増加を続けています。マテリアルリサイクルの欧州との比較でも我が国の伸び率は低調な傾向にあります。この原因の一つとして、プラスチックのユーザー業界や消費者においてリサイクル材料への期待や評価が低かったことが要因として考えられます。
このような状況の中、昨年より経産省ではユーザー業界でのリサイクル材料の活用活性化に向けての対策の検討が行われており、ユーザー業界のリサイクル材料への関心も高まっていきていると感じています。特に、欧州での新車へのリサイクル材の導入を義務化するELV指令案(End-of Life Vehicles)が公表された以降、我が国の自動車業界でもリサイクル材料に対する将来的な需要が顕在化しつつあり、国内でのリサイクル材料の供給力への懸念の声が高まりつつあります。
一方、フロー図の分析によると、我が国のマテリアルリサイクル材料の約7割が海外に輸出され、国内で循環利用されるのは3割程度しかありません。リサイクル材料の国内循環を進め、国内のユーザー業界への供給力を確保することは今後の重要な命題になると考えており、関係省庁や関係業界のご指導を受けながら、当協会としても必要な調査検討を進める所存です。

このような内外の情勢を踏まえ、当協会においては、昨年に策定した中期計画を踏まえ、①LCI(ライフサイクルインベントリ)データの提供とリサイクル技術などのLCA(ライフサイクルアセスメント)評価 ②フロー図の作成と精度アップ ③環境教育支援及び ④国際展開・途上国支援とリサイクル推進の四つをコア事業に位置付け重点的に実施し、循環型社会形成とカーボンニュートラルに向けた諸課題に貢献してまいる所存です。
具体的に申し上げますと、LCIについては、カーボンニュートラル対策の一環として、プラスチックのユーザー業界からのCFP(カーボンフットプリント)データの提供要請が高まっていることを受けて、2019年基準でのデータ取得と業界平均値の算定を今年度前半に完了させるとともに、今年度より2024年基準でのデータ取得に向けての3年計画のプロジェクトを開始いたします。算定結果はユーザー企業がメルクマールとして引用しているデータベース(IDEA)に反映し、広い関係者が活用できる環境を整備します。LCAについては、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」に基づく一括回収を促進するための環境影響評価などの調査を行います。一括回収される製品プラスチックなどは良質のリサイクル原料となるとの指摘もあり、前述のリサイクル材料の供給力の底上げにも寄与できるのではないかと期待しております。また、近年化学業界で盛んに検討されている新たなケミカルリサイクルの環境影響評価にも着手します。
フロー図については、毎年年末に策定・公表するスケジュールを大前提としつつ、更なる精度と信頼性の向上に向けて、調査検討を進め、政府・自治体、企業・業界、関係団体、市民など幅広い主体からの期待に応えられるよう取り組みます。また、フロー図の作成方法についての情報開示が分かりにくい、不十分であるとのご指摘を真摯に受け止め、フロー図公表の際の情報提供の拡充にも努めて参ります。
環境教育支援事業については、引き続き出前授業、教師向け研修、ホームページ、パンフレットを通して、ポイ捨て不可、分別排出の励行、リサイクルによる環境貢献、リサイクル材料を使った製品への興味の増進などリサイクルに関する啓蒙を推進します。当協会のホームページの年間の閲覧者数は145万人、読まれたページ数は500万ページ以上と近年急速に利用実績が増大し、リサイクルの重要性を子供たちや保護者の方に伝える有力な媒体に成長しております。今後も魅力あるコンテンツの拡充やソーシャルメディアの活用策検討などの新たな課題にもチャレンジし、子供たち、保護者、更には広く消費者の方にとっても有意義なサイトとなるよう尽力して参ります。

国際展開・途上国支援については、前述のとおりINC対応に遺漏なきよう万全を期するとともに、当協会のカウンターパート団体から構成される国際的な組織であるGPA(Global Plastics Alliance)会合に参加し、情報収集とフロー図の海外普及に向けての情報発信を図ります。プラスチックへの社会的な批判が強まった要因の一つが海ごみ問題であることを踏まえ、主要な海ごみの流出源であるアジア諸国の廃プラスチック管理の強化に向けて、経済産業省のアジア-プラスチック資源循環推進セミナー事業に主体的に参画・協力し、フロー図の普及と日本の優れたリサイクルの技術・制度・取組の紹介を通じアジア諸国を支援します。リサイクル推進については、経産省、リサイクル事業者団体とともに再生三者会議を主催し、前述の輸出されるリサイクル材料の国内循環への回帰などの課題について調査検討を行い、関係業界の取組を促進するとともに、政府への政策提言・情報提供を図ります。

以上の事業によって、国、自治体、関係業界、市民、NPOなどの幅広いステークホルダーによる循環型社会形成とカーボンニュートラル実現に向けての活動の一助となるべく努力して参ります。従来にも増して時代の要請に応える活動を進めていく所存ですので、より一層のご支援ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2024年6月18日
一般社団法人プラスチック循環利用協会
会長 工藤 幸四郎