2024.12.23

2023年廃プラスチック総排出量は769万t、有効利用率は89% 「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(マテリアルフロー図)」を公表

2023年廃プラスチック総排出量は769万t、有効利用率は89% 「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(マテリアルフロー図)」を公表

このたび「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」(マテリアルフロー図/以下、フロー図と略称)を公表しましたので、その概要をご紹介します。
2023年度、廃プラスチック排出業者(プラスチック製造・加工・使用事業者)を対象に産業系廃プラスチックの排出・処理処分に関するアンケート調査を5年ぶりに実施し、その結果を基にフロー図に使用される各係数の見直しを行いました。

対象となる係数は以下の8つとなります。

① 生産ロス率:樹脂生産時にペレット等の原料とならず未使用品として廃棄されるプラスチック(生産ロス品)量の投入樹脂量に対する割合

② 加工ロス率:樹脂加工時に製品とならず未使用品として廃棄されるプラスチック(加工ロス品)量の投入樹脂量に対する割合

③ 生産ロス由来のマテリアルリサイクル率:生産ロス品のうち、再生製品として利用される(マテリアルリサイクル)量の割合

④ 加工ロス由来のマテリアルリサイクル率:加工ロス品のうち、再生製品として利用される(マテリアルリサイクル)量の割合

⑤ 自治体/処理業者委託比率:産業系廃プラスチックの焼却や埋立を自治体に委託するか、処理業者に委託するかの比率

⑥ 自治体焼却/埋立比率:自治体に処理委託した産業系廃プラスチックを焼却処理するか、埋立処理するかの比率

⑦ 処理業者焼却/埋立比率:処理業者に処理委託した産業系廃プラスチックの焼却・埋立処理の比率

⑧ 処理業者 焼却方式別割合:処理業者に処理委託した産業系廃プラスチックの内、焼却される廃プラスチックの焼却方式別(発電焼却・熱利用焼却・単純焼却)割合

前回(2018年度)アンケート調査の対象業種は製造7業種だけでしたが、前年度実施した調査では対象業種を拡大し、製造7業種に製造1業種・建設業・非製造業を加えた幅広い業種を対象としました。従い、前回実施したアンケート結果より高い精度があると考えられるため、今回見直した係数については2018年まで遡って適用しました。

また、これまでプラスチック全体のフロー図を公開してきましたが、分野別として一般系についての「拡大容器・包材等フロー図」も掲載しました。(p4~5参照)

2023年国内の「樹脂生産量」は、前年対比64万t減の887万t、「国内樹脂製品消費量」も同等の62万t減により843万tとなりました。

その内訳は下図のとおりで、生産量はポリプロレン、ポリエチピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン類(AS、ABS含む)の順となっています。

樹脂生産量(887万t)の樹脂種類別内訳 ※ポリスチレン類:AS、ABSを含む

また「廃プラ総排出量」は、製品寿命の短い包装・容器分野の「国内樹脂製品消費量」減少の影響を受けて769万tと前年比52万t減となりました。このうち、有効利用された廃プラ量は688万tで前年比37万t減となり、このうち89%にあたる688万tが有効利用されました。

廃プラスチックの総排出量・有効利用/未利用量・有効利用率の推移

「廃プラ総排出量」の分野別、樹脂別内訳は下図のとおりで、昨年同様、分野別では包装・容器等/コンテナ類が、樹脂別ではポリエチレン、ポリプロピレンが主なものとなっています。

廃プラ総排出量(769万t)の内訳 ※ポリスチレン類:AS、ABSを含む

上記「分野別内訳」につき、これを「一般系廃棄物」(387万t)、「産業系廃棄物」(382万t)別でみたものが以下の図です。一般系廃棄物では「包装・容器等/コンテナ類」のみで全体の75%を、産業系廃棄物では「電気・電子機器/電線・ケーブル/機械等」と「包装・容器等/コンテナ類」の二つで全体の半分を占めていることがわかります。

(左)一般系廃棄物(387万t)の分野別内訳

(右)産業系廃棄物(382万t)の分野別内訳

有効利用率89%の内訳は、マテリアルリサイクル22%、ケミカルリサイクル3%、サーマルリサイクル(エネルギー回収)64%となりました。有効利用率の一層の向上のためには、11%(81万t)を占める未利用の単純焼却(8%:58万t)、埋立(3%:24万t)をリサイクルの流れの中にうまく取り込んでいく必要があります。

一方、マテリアルリサイクルの利用先としての廃プラスチック輸出量は、プラ屑として54万t、再生原料として71万tの合計125万tで、マテリアルリサイクル品の約70%が輸出されています。

マテリアルリサイクル品の利用先

フロー図には環境負荷情報も記載しています。環境削減効果(削減貢献量)は、日本国内で消費されるプラスチックを対象とし、廃プラスチックをフロー図記載のとおり有効利用した場合と有効利用せずに単純焼却したと仮定した場合とについて、プラスチックのライフサイクルにおける各段階(原料調達、プラスチック製造、同加工、使用済品の収集・回収、使用済品の処理・処分)のエネルギー消費量、CO2排出量をそれぞれ算出し、各総計の差をとることで求めています。

フロー図記載数値に基づく2023年のエネルギー削減効果は、前年比8PJ減の251PJ (一般系廃棄物101PJ、産業系廃棄物150PJ) となりました。これは、家庭消費総エネルギー量の約9%、565万世帯分に相当します。

またCO2削減効果は、前年比38万t減の1,750万t(一般系廃棄物672万t、産業系廃棄物1,079万t)で、これは家庭からのCO2総排出量の約8%、459万世帯分にあたります。

* 家庭消費総エネルギー量( 自家用車の使用量を含む) : 2,699PJ(44.4GJ/世帯・年)

* 家庭からのCO2総排出量(自家用車の排出量含む) : 2.32億t-CO2 (3.81t-CO2/世帯・年)

上記は2022年の経産省・環境省データを基にプラスチック循環利用協会で計算した値を使用

* 全世帯数 : 6,078万世帯 (2024.1.1. 総務省Webサイトより)

* GJ:ギガジュール=10の9乗ジュール

* PJ:ペタジュール=10の15乗ジュール

プラスチックを使うことはややもすれば環境に悪いものとみられがちですが、上記のとおりプラスチックをうまく使うことによって実は環境負荷軽減に多大な貢献をしているということをおわかりいただけるのではないでしょうか。

 

■フロー図詳細をお知りになりたい方はここをクリックしてください
※フロー図冊子も無料で配布しています(当協会ホームページからも請求できます)。

 

■フロー図のバックナンバーはこちら