2013.08.15
台湾リサイクルレポート 第3号 こんな処理になってたんだ!~プラスチック資源ごみのゆくえ~
みなさんこんにちは。林 佳衡(ジャーヘン)です。
前回のリサイクルレポートでは、台湾のリサイクルシステムを紹介しましたが、日本のみなさんにとっても興味深い内容ではなかったでしょうか? 私自身台湾に住んでいながら知らないことが多く、とても勉強になりました。
今回は、さらに資源ごみのゆくえを追いながら、回収商とプラスチックごみのリサイクルについて詳しくご紹介したいと思います。
~住宅事情によるさまざまな資源ごみの出し方~
1、2号でも触れましたが、台湾のごみ出しは、収集車が決められた時刻にやってきて地域の住民はそのときにごみを収集車のところまで持っていくというのが全国共通の基本的なシステムです。
でも、収集車の来る時間帯に不在者の多いマンションとか、路地が狭くて収集車が入れないような住宅密集地などではどうしているのでしょうか。また、住宅の種類によってごみの出し方に違いがあるのでしょうか。
そこで、一戸建住宅、共同住宅、マンション、店舗一体型住宅とさまざまなタイプにお住まいの方々に、伺ってみることにしました。
<一戸建住宅の場合>
お話しをお聞きしたのは、私と同じ新北市にお住いのご婦人です。
ジャーヘン: ごみ出しはどうしていますか。プラスチックボトルなどの資源ごみはどのように分別していますか?
ご婦人 : ごみは、生ごみ、資源ごみ、一般ごみの3種類に分けています。うちの場合、野菜果物屑は、庭の肥料にするので生ごみはあまり出ません。資源ごみは、古紙・箱、プラスチックボトル、缶、瓶の4種類です。そんなわけで、うちで出すのは、資源ごみと一般ごみが多いですね。
ジャーヘン: 資源ごみは、4種類に分別して出すのですか?
ご婦人 : 一つの袋に全部入れて出しています。
私の家は同じ新北市内ですが、一戸建てではなかったので、ごみの出し方に違いがあるのではないかと思いましたが、資源ごみの出し方も収集車が来る曜日・時刻が決まっていること、収集車が2台で来ること、いずれも同じでした。
<共同住宅の場合>
台北市も郊外になれば一戸建住宅が増えてきますが、市街では下の写真の様な共同住宅が一般的です。共同住宅でのごみ出しは、基本的に全国共通のシステムと同様ですが、市内には、建物が密集し大型車輛の通行が難しい狭い路地が入り組んでいる共同住宅街が各所にあります。
このようなところでは収集車の巡回が難しいので、大通りに近い場所にごみ出し場を設け、周辺住民がごみ出しできるようにしています。ここに集められたごみは、収集車が回収にきてくれます。
私の家も共同住宅ですが、大型車両が通れる地域なので、直接収集車に出すことができます。同じ共同住宅でも、地域によってごみの出し方が異なる場合があるとわかりました。新北市も同様で、収集車には地方清潔隊のスタッフが2人付いて、ごみの回収時に市民の出すごみの分別方法を指導しています。
一方、ごみ出し場にも同様に、管理・指導する人が2人常駐して、ごみ出しに来た市民が出すごみのチェックをしています。
ごみ出しルールに違反した人には、悪質なものとみなされると過料が科せられることもあります。
<マンションに住んでいる場合>
次に台北市内のマンションの管理責任者の方にお話を伺いました。このマンションは緑あふれる敷地内に高層住宅棟が立ち並び、外国人の駐在員などが多く住んでいるところです。
ジャーヘン: ここに住んでいる方は、どのようにごみ出しをしているのですか?
管理責任者: このマンションでは、中庭裏手に住民専用のごみ出し場が設けられており、居住者はそこまでごみを持ってきて出すことになります。ただ、ごみ出し時間が決められており、夜6時から9時までです。それ以外の時間は入り口に鍵がかけられてしまうのでごみは出せません。ごみ出し場には、ごみの種類別のボックスが置かれているので、それに従って分別してもらうことになります。
ジャーヘン: 資源ごみの分別などで迷ってしまうことはないのでしょうか?
管理責任者: ごみ出し場の管理人さんがいるので、わからなければ教えてもらえます。
ジャーヘン: ここのごみ出し場に集まったごみはどうするのですか?
管理責任者: 収集車が、水曜と土曜以外の毎日ここまで取りにきてくれます。その応対はごみ出し場の管理人さんが行います。
ここのマンションに来る収集車は、一般ごみ用の1台のみです。資源ごみは契約している回収商に持っていってもらいます。前回ご紹介した四合一制度でも出てきましたが、回収商に資源ごみを出すとお金に換えることができます。このお金はマンションの管理運営費用などに充てられているそうです。
ちなみにここのマンションには、いろいろな国の人が住んでいるため、ごみボックスには台湾語、日本語、英語でごみの種類が示されていました。私の地域では見たことがなかったので驚きました。ところで、写真では「各類瓶罐」の表記の下に日本語で「ビン・カン類」と表記されていますが、台湾では瓶はボトル容器全般を指すので、プラスチックボトルもここに含まれます。
<店舗一体型住宅の場合>
さて、今度は温泉で有名な新北市「烏来区」に行って、飲食店を構えるご主人に家とお店のごみの出し方についてお話を伺ってみました。
ジャーヘン: このお店ではどのようにごみを出していますか?
ご主人 : 家庭の分別方法と同じで、お店から出るごみも家のごみを回収する収集車に直接出していますよ。
ジャーヘン: お店で出るごみの量と家から出るごみの量とではかなり差があると思うのですが、分別ルールは同じなのですか?
ご主人 : お店の場合は、生ごみ、一般ごみ、資源ごみの3種類すべて市指定の有料ごみ袋に入れて出しているよ。回収費用はこの料金から徴収されているからね。烏来は飲食店の規模があまり大きくないので、お店のごみは余り出ないんだ。だからお店のごみと家のごみを同じ袋に入れて出すこともできるんですよ。
ジャーヘン: プラスチックボトルなどの資源ごみの分別も家と同じですか?
ご主人 : 一緒だね。リサイクルマークが入っているから、わかりやすいよ。
基本的には、お店でもごみの分別ルールは一般家庭と同じだということがわかりました。家庭は一般ごみだけを有料ごみ袋に入れていますが、お店と住宅が一体型の場合はすべてのごみについて市指定の有料ごみ袋を使わなくてはなりません。
お話しを伺ったお店は、一階が飲食店、二階を住居として、家族で経営しています。烏来区では、お店から出るごみの量が少なければ家庭ごみと一緒に出すことが認められていました。
今回インタビューしたのが、お店と家が一体となった小規模のお店でしたが、スーパーやコンビニではどうなっているか興味が出てきました。
さまざまなタイプのごみ出しを取材しましたが、地区によりごみの収集方法や時間帯などに少し違いはあるものの、分別ルールの基本はどこへ行っても同じであることがわかりました。分別ルールが同じならどこに引っ越しをしても迷いませんね!
~資源回収隊へ~
収集車によって回収されたごみがそれからどうなっているのか取材しました。
収集車1台目の一般ごみはそのまま焼却場に運ばれますが、2台目の資源ごみは「資源回収隊」が管理する集積場に一旦集められます。そこで「台北市政府環境保護局・資源回収隊」にご協力いただき、集積場を見学させてもらいました。
この集積場では、第2号でも紹介した資源ごみ14種類すべてが収集されています。収集車で集められた資源ごみは、ここで種類ごとに分別されます。台北市では、資源ごみの中でも古紙や古着は月と金曜日、プラスチックボトルや家電などかさばるものは火、木、土曜日に収集されています。
訪れた日にはプラスチックボトルの山がたまたま見られましたが、実際のところは、資源ごみ収集の段階で回収商がその多くを引き取ってしまうので、この集積場に持ち込まれる量はごくわずかだそうです。台北市としても、分別の手間が省けるため、回収商の引き取りを認めています。
さて、ここで集められた資源ごみはどうなるのでしょうか。実は台北市では、14種全種の資源ごみを取り扱う回収商と契約して、資源ごみを引き取ってもらっています。
~回収商とは~
これまでにもいくたびか回収商に触れてきましたが、今回の取材で、回収商といっても、規模、地域、回収対象資源、回収商間の繋がり、事業の運営のやりかたなど多種多様であることがわかりました。台北市政府環境保護局と契約して資源ごみすべてを回収・分別する大規模な回収商もいれば、特定の資源ごみのみを扱う小規模な回収商もいます。あるいは回収のみ、分別のみの回収商もいます。
また、一口に回収のみといってもさまざまで、台北市内全域を対象とする回収商もいれば、一部の共同住宅エリアを回収対象とする回収商もいます。さらに、回収商同士で連携して資源ごみの回収・分別まで行っているケースもあります。
資源ごみは14種類ですから、取り扱い資源ごみ別、回収エリア別などで分類すると一口に回収商といっても、いろいろなタイプの回収商が存在しているということになります。
そこで今回は、プラスチックボトルだけを取り扱う回収商の「富鉅環保科技有限公司(以下、富鉅)」に取材をさせていただくことにしました。
富鉅では、主に5種類(PE、PP、PET、PVC、PS)のプラスチックボトルの回収・分別・貯蔵(ベール作り)を行っています。ここで回収するプラスチックボトルのほとんどは、プラスチックを集めている個人経営の回収商からのものです。その他、学校や団体からも回収しているものも一部あるそうです。
富鉅によれば、プラスチックボトルの引き取り価格は、きちんと種類ごとに分別しているものは、混ざった状態のものよりも少し高めの設定にしているとのことで、この仕組みは他の地域でも変わらないようです。
集められたプラスチックボトルは、人の手によりさらに細かく選別されます。作業員は、ベルトコンベア上を流れるプラスチックボトルを一瞥して各自に割り当てられた特定種類のプラスチックを取り分けるシステムになっていました。ベルトコンベアのスピードはとても速いものでしたが、ベテランになれば、プラスチックの種類は一目でわかるそうです。
プラスチックの種類は、製品によってある程度決まっているのでとのことでしたが、それにしてもすごい職人技です!
5種類に選別したプラスチックボトルのうち、PE、PETについてはさらに分別します。PEは「牛乳・ヨーグルト類」と「洗剤」の2種類に、PETは「有色」「無色」「オイル」「醤油」の4種類に分けます。
それらのプラスチックボトルなどを分別した後に、圧縮機でベールを作ります。
プラスチックボトルの取引き量は、本格的な暑さが始まる5月からがオンシーズンで、PETボトルを中心に右肩上がりで徐々に増加し、オフシーズンとなる12月以降減少していきます。
~プラスチックボトルの再生製品~
回収商でベールにされたプラスチックは、原料メーカーに運ばれフレークやペレットに加工されます。そしてこれを素に再生製品が作られます。この流れを実際に見たいと思い取材しました。
ご協力いただいたのは、「亞東創新發展股份有限公司(以下、亞東)」とその親会社の「遠東新世紀股份有限公司(以降、遠東)」です。「亞東」では、PETとPEのベールからフレークを製造しています。そして、「遠東」でこのうちのPETフレークをペレット化したうえで、それを使い、自社のBtoBのPETボトルや繊維製品などを作っています。
取材に行ったのがたまたまベール受け入れ日だったので、大量のPETボトルベールを見ることができました。1ベールで約400㎏、およそ約13,000本のボトルが圧縮されているそうです。
プラスチックの回収商でも見たベールも、亞東に運ばれてくるベールも多くがラベルやキャップが付いたままでした。日本では、ラベルやキャップを外して資源ごみに出すように言われていたことを思い出し、台湾ではなぜ付いたままにしているのか聞いてみました。すると台湾では、国産のボトルあるいは国内販売のボトルのベールであることの証拠として、キャップやラベルをそのまま残すことになっているとのことでした。
ラベルやキャップを取るか取らないか、台湾と日本とで正反対であることがわかりとても面白いと思いました。
後で調べてみると、四合一制度の中の回収基金の運用を管理している行政院環境保護署資源回収管理基金管理委員会では、市場に出回る資源ごみの量と回収商や処理場、リサイクルメーカーに届く量の数値を出し、それぞれの資源ごみの回収補助金レートを決めており、その為、処理場やメーカーに届く資源ごみのベールは、台湾国内の資源ごみであることが大前提だということがわかりました。
亞東に持ち込まれたベールは梱包の開破ラベルの剥離、プラスチックボトルの細断、そして2回の洗浄を経て、フレークとして袋詰めされます。また亞東では、PETボトルについては、無色のフレークの他に、有色のものは水色・青色・緑色・茶色の4種類に分別して、色ごとのフレークを作っています。日本ではPETボトルは透明のもののみで有色のものはありません。PETボトルフレークの一部は、遠東の工場に運ばれリサイクルペレットになります。
こうして、台湾国内で消費され、リサイクルされたプラスチックボトルは、フレークを経てペレットになり再生製品が作られます。具体的には、PEボトルはプランターや掃除機などに、PETボトルは繊維製品などに生まれ変わっています。遠東によれば、化粧品の箱や商品のパッケージ用フィルムなどの原料にもなっているそうです。
取材を通じて、台湾では、プラスチックのマテリアルリサイクルがしやすいように、できるだけ単一素材でプラスチックボトル、製品、パッケージを作るよう努力していることがわかりました。マテリアルリサイクルに向かない複合素材のプラスチックはすべて焼却され、熱回収によるリサイクルが図られています。
今回のレポートでは、資源ごみのゆくえからリサイクルまでを紹介いたしましたが、次回は台湾全体の一般廃棄物と産業廃棄物の違いを調べてみたいと思います。
みなさん是非第4号もお楽しみに!
【取材協力】
・台北市政府環境保護局 資源回収隊
・台北市政府環境保護局 萬華区清潔隊(大理分隊)
・敦北翠苑社區 管理委員会
・遠東新世紀股份有限公司
・台北市富鉅環保科技有限公司
・北烏来・翠山飲食店
・台北市萬華區華江里 楊 華中里長
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