8月、見学と現地取材を実施しましたのでご紹介します。
日々の生活で必ず付き合わなければならないごみですが、その排出や処理には自治体ごとにきめ細かなルールが策定されています。このため自治体の窓口には、ごみの分別や処理方法などに関する問合せが多く寄せられます。
三重県四日市市で平成28年4月から稼働している「四日市市クリーンセンター」(四日市市垂坂町)は、ごみ処理に苦労する市民の負担を軽減した施設として注目されています。
四日市市では、一般廃棄物を取り巻く社会情勢の変化に対応しつつ、循環型社会の構築を目指すためのごみ処理施策を推進しており、この施策のひとつとして、老朽化した北部清掃工場に代わる高効率ごみ発電施設、四日市市クリーンセンター(以下、クリーンセンター)を整備しました。
クリーンセンターの整備により、可燃ごみに加え、これまで不燃ごみとして埋立処理していた廃プラスチック類を焼却により積極的に熱回収を行うとともに、不燃ごみ及び粗大ごみの破砕・選別処理等により鉄やアルミなどの資源を回収しています。また、粗大ごみや廃プラスチック類がクリーンセンターで溶融処理できるようになったことから、最終処分量の削減にも寄与しています。
クリーンセンターは約8万平方メートルの敷地内に可燃ごみ、可燃性粗大ごみなどの処理を目的に、一日に合計336トンを処理できるシャフト炉式ガス化溶融炉3炉を中心とする焼却施設と、破砕ごみや不燃性粗大ごみなどを処理する破砕施設で構成されています。 近鉄名古屋線富田駅から車で約10分の距離にあり、近くには東芝のフラッシュメモリー工場が立ち並んでいます。
クリーンセンターの稼働を契機に、家庭で発生した廃プラスチック類が可燃ごみに区分変更となり、以前は隔週の収集であった廃プラスチックが可燃ごみとして週2回ごみステーションに出せるようになり、利便性が向上したとの意見が市民から市に多く寄せられています。
家庭で発生した廃プラスチック類などは、これまで四日市市南部埋立処分場で埋立処理をしていましたが、埋立処分場の残余年数の課題もあり、廃棄物の埋立処分場の延命対策が迫られる一方、廃プラスチック類の回収頻度を増やしてほしいという市民の要望を一気に解決したのが最新式シャフト炉式ガス化溶融炉の導入でした。家庭で発生する生ごみや廃プラスチック類、リサイクルできない紙くずや草木などを1700度Cから1800度Cで焼却、溶融し、発生する高温燃焼ガスにより得られる高温・高圧の蒸気を使って最大9000kWの発電が可能になりました。とりわけプラスチック類はサーマルリサイクルを支える燃料となっています。
粗大ごみやガラス・陶器類などは破砕ごみとして破砕施設で受け入れ、破砕処理を行うとともに、磁選機や選別機を用いてアルミや鉄を回収しています。また、溶融処理により発生したスラグやメタルを資源として有効利用しています。このほか資源物に分類された紙や衣類、ビン、飲料缶、PETボトル、さらに使用済みの携帯電話やパソコンなど小型家電、蛍光管、乾電池などは民間の再生事業者に売却し資源化しています。
クリーンセンターは最新鋭設備を導入するとともに環境対策に万全を期しています。ばいじん、SOX、NOX、ダイオキシン類など8物質の排ガスは、国より厳しい排出基準を設定して環境との調和を図っています。
また、クリーンセンターでは、市のごみ処理対策や資源循環社会構築に向けた取り組みを啓発するため、主に小学生や自治会などの見学を積極的に受け入れています。窓越しに処理施設内部を公開するとともに、映像やパネル展示などでわかりやすく説明しています。ごみ処理施設であることを忘れ、ハイテク工場と間違いそうな明るく、楽しい雰囲気を醸し出しています。
クリーンセンター稼働に伴う費用対効果について市の生活環境課に確認したところ、ごみの分別区分の変更に伴いごみの収集に要するコストは割高になったものの、ごみ発電による売電収入などが貢献し、ごみ処理コストは以前より低下しているそうです。
政府の廃棄物行政は縦割りの弊害もあって効率性に欠け、自治体も振り回されがちです。廃プラスチック類の対策も試行錯誤が続いていますが、四日市市では、3Rの推進、循環型社会の実現に向けて産業界や消費者、行政が連携していく必要があると考えています。
四日市市はPETボトルも独自処理を長年続けてきました。その背景には使用済みPETボトルに過剰とも思える品質が要求され、自治体の負担が大きいことがあります。輸出に振り回されて需給や価格の変動が激しいことも障害になっています。課題の多い廃棄物行政ですが、四日市市クリーンセンターが循環型社会構築に向けて一石を投じたことは間違いないでしょう。
■四日市市役所ホームページ
http://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/index.html
- 学習支援サイト