2012.11.16
都市ごみのセメント資源化システムを構築した日高市と太平洋セメント(株)
8月7日、家庭や事業者から排出された可燃ごみをセメント原燃料としてリサイクルする世界初のシステムを導入した日高市の市役所と、そのすぐ近くに位置する太平洋セメント㈱埼玉工場を訪問しました。
日高市は、埼玉県の南西部に位置し都心から40km圏内の距離にあり、秋には百万本もの曼珠沙華が咲き誇る巾着田でも知られており、外秩父山地の東麓にある自然豊かな人口約5万7千人の市です。
リサイクル率99%以上を誇る次世代の都市ごみ処理システムを導入した日高市の取り組み
都市ごみの資源化システム導入の経緯
日高市は、人口増加に伴うごみの量の増加や1973(昭和48)年に建てられたごみ焼却施設の老朽化を見据えて1980年代より新たなごみ処理施設の計画をしていました。既存のごみ処理施設の延命を図りながら、1993(平成5)年より新たなごみ処理方法やダイオキシン対策等、様々なごみ問題についても検討を開始しました。これまでにも産業廃棄物を資源として有効に活用し事業を展開してきた太平洋セメント㈱埼玉工場と1996(平成8)年に研究会を設置し、環境に配慮した新たなごみ資源化方法について研究を重ねました。
その結果、太平洋セメント㈱埼玉工場は都市ごみの資源化システムを考案し、2001(平成13)年より1年間にわたる実証試験を行いました。日高市は周辺地域をはじめとする市民への説明等を行い、2002(平成14)年12月から今まで使用していた清掃センターでの焼却処分を廃止し、太平洋セメント㈱埼玉工場での可燃ごみ資源化処理を開始しました。
資源化処理のメリット
・資源化処理は、従来の可燃ごみに加え、プラスチック類、ガラス類及びセトモノ類が対象品目になります。これにより、効率的な資源循環が実現されるとともに市民の分別負担の軽減が図られました。
・ごみ焼却場が不要になりました。また、焼却灰までをも再利用されることから、最終処分場への埋め立て処分が激減し、相当な期間の延命化が図れました。
・資源化物は、1,450℃以上の高温で焼成されるため、ダイオキシン類などは発生せず、悪臭もありません。
現在では一般家庭から排出される可燃ごみ年間約12,000tと事業系の可燃ごみ約4,000tを資源化しており、市民生活を支えるとともに市民の方々からも高い評価を得ています。
~資源循環型社会を目指し地域と共生するセメント工場~ 太平洋セメント㈱埼玉工場
太平洋セメント株式会社 埼玉工場
〒350-1296 埼玉県日高市大字原宿721
1955(昭和30)年4月 操業開始
セメント生産能力:1,730,000t/年
その他事業:都市ごみ資源化事業、発電事業
太平洋セメント㈱埼玉工場の菅原製造部長、坂口総務課長にもお話を伺いました。埼玉工場は東京ドーム6個分もの面積のある広大な敷地にあり、都市ごみの資源化システム(*AKシステム)を導入した工場内の見学もさせて頂きました。
*AKシステムは、家庭から排出された可燃ごみや事業系の可燃ごみを、ごみ資源化キルンを利用して約3日間生分解反応(好気性発酵)をさせ、さらに破砕・金属類の除去をしてセメントの原燃料としてリサイクルするシステム
*ごみ収集車で運ばれてきた可燃ごみは、袋のままごみ資源化キルンの受入室へ投入されます。
*ごみ資源化キルンに投入されたごみ袋は低速回転するうちに破れ、可燃ごみを混合します。有機物は分解されて衛生的な資源化物になります。キルンには日高市の鳥、かわせみの絵が描かれています。
*AKシステムで処理された資源化物(可燃ごみ)は選別・破砕されセメント原燃料として使用されます。
処理出来ないごみ(金属類など)は日高市最終処分場で埋め立てされます。
なお、日高市が最終処分場に埋立てる量は年間約65t。資源化処理の導入により最終処分場は当初の計画の10倍以上もの延命が図られました。
*原料と調合され焼成工程等を経てセメントへ。セメントの主原料の石灰石は秩父の武甲山の鉱山より、Yルートと呼ばれる6基のベルトコンベアを23.4km乗り継いで工場内へ運ばれてきます。
2002(平成14)年の処理開始から現在に至るまで都市ごみの資源化システムは安定操業をしており、この実績から経済産業大臣賞等など数々の栄誉ある賞を受賞し、環境に優しい次世代のごみ処理方法として高く評価されています。 また工場見学会等を開催し市民の方々の理解を受けながら、日高市と共生する工場として活躍しています。
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