製品プラの資源化の現状 資源化を選択した自治体と処理施設を訪問
「ごみ減量化・リサイクル推進員」制度を推進する越前市と南越清掃組合(福井県越前市・南越前町・池田町)の取り組み
日本海に面した福井県越前市は、2005(平成17)年に旧武生市と旧今立町が合併して生まれた人口8万5千人の街です。越前和紙などの伝統工芸から、電子部品などの先端技術産業に至るまで幅広い産業がある「ものづくり都市」です。
同市は南越前町(人口1万2千人)、池田町(人口3千人)で構成する広域清掃組合、南越清掃組合で廃棄物の処理を行っています。
2月23日、同組合第2清掃センターにて南越清掃組合第2清掃課参事の木津氏にお話を聞きました。
越前市はリサイクル推進員の認定制度で分別を推進
同組合は1973(昭和48)年に設立され、第1清掃センターは生活系、事業系の可燃ごみの焼却施設として、1984(昭和59)年から稼働しています。第2清掃センターは1997(平成9)年に建設され、第1清掃センターの焼却残渣の処理、不燃ごみ、粗大ごみの処理、プラスチック圧縮減容施設を有しています。
福井県内ではごみを細かく分別しているほうで、燃やせるごみ、燃やせないごみ、粗大ごみ、有害ごみ、資源ごみ(容リプラ、空き缶、空き瓶(3色)、ペットボトル、スプレー缶、ビデオテープ・カセットテープ、古紙類)、処理困難物に分けて回収しています。製品プラは燃やせないごみとして、ビン、缶等と一緒に回収します。
トレイについては、住民団体や店舗が自主的に回収していますが、行政としては容リプラとして回収しています。
越前市では、分別によりごみの減量化を進めるため、リサイクル推進員の認定制度をつくり、①ごみの分け方出し方を他の人に教える、②ごみステーションの管理方法を考え実行する、などの活動を担ってもらっています。また、ごみステーションには、色別のコンテナやカゴなど一目でわかる専用の容器を置き、分別しやすいように工夫しています。
製品プラの処理工程
容リプラは資源ごみとして、製品プラは燃やせないごみとして、第2清掃センターに収集します。容リプラと製品プラは別々に中間処理し、それぞれ圧縮・梱包します。埋め立て処分場の延命が大きな課題だったので、同センターは設計段階からプラスチックを再資源化するための施設として計画されました。プラスチックの分別・再資源化に関する住民の反応について、木津参事は「もともと、PTA、婦人団体など、住民も古紙などの資源ごみ回収や残った食品の堆肥化に熱心に取り組んでいたことから、循環型社会に向けた取り組みとして理解を示してくれました」と話します。
容リプラと製品プラの資源化量はほぼ同じで、各々約1,200t/年となっています。
第2清掃センターの処理能力は19t/日ですが、現在は月20日稼働で処理実績が10t/日です。2011(平成23)年は、第1清掃センターでの可燃ごみの焼却施設の問題で、できるだけ製品プラとして出してもらったため、処理量が増加しました。
製品プラは(株)武生環境保全に処理委託して、RPF化され、残渣も同社で処理されています。
また、ペットボトルも(株)武生環境保全へ販売しています。同清掃組合にはペットボトルの梱包施設がないことから、設備投資をして容リ協ルートに出すのは難しいという考えからです。
民間企業として日本で最初にRPFを製造した(株)武生環境保全
株式会社 武生環境保全
〒915-0801 福井県越前市家久町第2号45-1
1951(昭和26)年3月20日設立
RPF処理能力:
固形燃料化処理28t/日(8h)
その他施設:
一般廃棄物及び産業廃棄物の熱焼却処理施設、破砕処理施設など
越前市の(株)武生環境保全は、本社工場と第1~第4工場の計5つの工場を持ち、選別処理事業、熱焼却処理事業、RPF製造などのリサイクル事業を行っている会社です。2月23日、第2工場を訪問し、谷崎社長にお話を伺いました。
20年以上前に始まったRPF製造
武生環境保全は、現社長の父親の代の1951年に、し尿処理業から開始した会社で、産業廃棄物処理業を始めたのも福井県で最初でした。
同社は缶コーヒー用のコーヒー豆の搾りかすを乾燥する押し出し乾燥機を持っていたことから、1990年から産廃プラスチックを活用したRPF製造にのり出しました。処理能力は60t/月あります。民間企業でRPFを製造したのは、同社が日本で初めてで、業界の先駆者として他社への技術提供も行っています。
2006年からは一般廃棄物の廃プラ(製品プラ)を本格的に原料として利用するようになりました。
ここに至るには紆余曲折があり、南越清掃組合から出るペットボトルをRPF化していた時期もあります。また、容リプラのマテリアルリサイクル(パレット化)工場から出た残渣を受け入れていたこともあります。
2012年1月に洗浄設備が完成して、プラスチックの汚れ(食品残渣や埃等)を除去し、塩素濃度を下げることができたため、RPF製造時の使用率を従来の倍にすることが可能になりました。一般廃棄物のプラスチックを90t/月程度受け入れ、その約半分の45t/月と産廃プラ150t/月をRPFにしています。RPFの中のプラスチックの割合は50~60%、ほかに木材・紙・化繊・畳などです。紙については、以前は混入できなかった感熱紙、ラミネート紙も現在はリサイクルできるようになりました。
2種類のRPFを製造
ここで製造されるRPFは太さの異なる2種類で、直径10mmのものを150t/月、直径30mmのものを200t/月製造しています。細いほうは以前からある機械で、90℃程度の摩擦熱で溶融し、押出固化しています。太いほうは120℃程度で加熱溶融します。
RPFの販売先は製紙会社、繊維会社等です。
武生環境保全のその他の業務
同社は現在、本社工場と第1~第4工場まで有し、廃棄物の収集・運搬、選別・破砕、圧縮、資源化、焼却まで行っています。プラスチックについてはRPF化のほかに、第1工場では産廃プラの単一素材をマテリアルリサイクルして、PE、PP、PVC、PSをフレークにして販売しています。ペットボトルは第2工場でフレーク化して国内で処理する会社に販売しています。発泡PSは第3工場でペレット化、一部はインゴットにして販売しています。
5つの工場はいずれも廃棄物中間処理業として、ISO9001を取得しています。
「RPFは売って儲かるものではない」というのが谷崎社長の現在の気持ちで、産廃の不足が大きな打撃になっているようです。「それなら、容リプラをRPFに使えたらよいと思いますか?」と聞いたところ、それではマテリアルリサイクルの会社が成り立たなくなる、と問題の解決はそう単純ではないことを指摘されました。
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