製品プラの資源化の現状 資源化を選択した自治体と処理施設を訪問
分別収集の「沼津方式」で知られる静岡県沼津市の取り組み
2月21日、沼津市クリーンセンターにおいて、沼津市ごみ対策推進課・及川主幹、クリーンセンター管理課・佐々木課長、山本課長補佐にお話をうかがいました。
製品プラを分けるまで
静岡県沼津市は富士山と駿河湾を望む自然豊かな都市で、JR東海道線、東名高速の要所として昔から栄える人口20万人の都市です。また、リサイクルという言葉が一般化する前から、全国に先駆けて、市民と行政の協働により「沼津方式」と呼ばれるごみの分別収集(燃やすごみ、埋め立てごみ、資源ごみ)を始めたことでも知られています。
現在も分別収集によるごみ減量化とリサイクルの取り組みを熱心に行っています。1人当たりのごみの量は、943g/日(2009(平成21)年度)で、全国平均の1,012g/日を大きく下回り、リサイクル率は29%です。
現在は全部で18種の分別が行われていますが、収集の曜日も違い、市民の意識としては大きく4つ「燃やすごみ、埋め立てごみ、資源ごみ、プラごみ」に分けるというとらえ方なので大きな混乱はないそうです。例えばビン類を3つに色分けすると言っても、住民はごみ集積場所までまとめて持って行き、それぞれのコンテナに分けながら入れるため、それほど手間や負担がかかるわけではありません。
プラスチックについては、1999(平成11)年から、それまで燃やすごみに含まれていたビニールやラップ類及び埋め立てごみに含まれていた製品プラスチック等をプラスチックごみとして、同じく埋め立てごみに含まれていたペットボトルを資源として、それぞれ分別収集を始めました。このとき、市のごみ収集指定袋制度も取り入れました。一方、中身が見える、ポリ袋であるなど一定の基準を満たしたレジ袋は、市でごみ袋として認定し、それはごみ出しに使ってもよいこととし、レジ袋の再使用によるごみの減量化を図りました。
2003(平成15)年からは、プラスチックごみを容リプラと製品プラに分けて、容リプラは週1回収集し、指定法人の公益財団法人日本容器包装リサイクル協会(容リ協)を通してリサイクルすることにしました。一方、製品プラは「熱源利用プラスチックごみ」として月1回、収集を開始しました。ここにはおもちゃ、文房具、植木鉢、CDケースなどの製品プラのほか、扇風機、掃除機などの小型家電も含めています。
このように廃プラスチックをリサイクルすることにより、埋め立てごみの収集量を1998(平成10)年度:11,420tから2009(平成21)年度:1,549tと大幅に減量することができました。
製品プラは一旦、最終処分場に併設された保管場所に集められ、そこから処理施設に運ばれます。現在は週6回、委託先に引き取りに来てもらい、固形燃料(RPF)による再資源化を行っています。委託先を選んだ理由は、RPFの残渣も焼却あるいは埋立てとして、全量処理できる点が安心だからです。
2011(平成23)年度の資源化見込みは、容リプラが年間2,773t、製品プラが2,148tです。
プラスチック分別のきめ細かい説明
プラスチックの分別は住民にとっても、それほど簡単ではありません。2007(平成19)年に容リ協から、汚れの目立つもの、容器包装以外のプラなどが混入しているという指摘があり、住民説明会を開き市民に協力をお願いしました。 説明会では、分別方法だけでなく、なぜ容器プラを分けるのかや、容器包装リサイクル法の仕組みも合わせてスライドを使って説明するとともに実物の容器包装プラを持参するなど、きめ細かい説明に心がけたそうです。
沼津市の場合、ごみ分別・ごみ減量に対する住民の意識が高く、資源回収の日には、多くの自治会で、当番制などにより、分別の徹底を図っています。その結果、ペットボトルでは、キャップとラベルが排出の段階でほとんどとられていて、高品位を確保できています。
プラスチック資源化の基本的考え方
沼津市では、容リプラの処理は指定法人である容リ協のルートに全て出し、ペットボトルは指定法人と民間業者に委託しています。これは、リスク分散という考え方で、全部を一つのルートに頼っていると何かあったときに処理できなくなるという理由からです。
コスト的により高く買い取ってくれる業者にペットボトルを販売するという考え方もありますが、それによって海外にペットボトルが輸出されると、国内の資源循環が絶たれてしまうため、コストよりも、確実に国内でリサイクルする業者に委託することを優先しているのです。
このように、分別するのはごみの減量・再資源化により、資源循環型社会をつくるためという目標が貫かれています。
卵1個分のごみ減量を目標に「57(こうなん)運動」に取り組む愛知県江南市と江南丹羽環境管理組合
2月21日、江南丹羽環境管理組合の環境美化センターにおいて、江南市生活環境部環境課・相京氏、江南丹羽環境管理組合業務課・石川氏、極東サービスエンジニアリング西日本(株)江南事業所・今枝所長のお話を聞きました。江南丹羽環境管理組合は、1967(昭和42)年に江南市・丹羽郡大口町・丹羽郡扶桑町(3自治体を合わせた人口は約16万人)により設置された組合です。
江南市のごみ処理経緯
江南市は人口約10万人で、近年名古屋市のベッドタウンとして都市化が進んでいます。
1976(昭和51)年に埋め立て処分場の不足、不燃物専用ボックスに可燃ごみが混入するなど、問題が深刻化したのをきっかけに、「ごみの非常事態宣言」が出され、沼津市など先進的な自治体を視察して、ごみの分別収集を始めました。可燃ごみと不燃ごみだけだった分別に各種の資源ごみの分別が加わり、2002(平成14)年までには29種の分別が行われています。中には、廃食用油、在宅医療廃棄物、使用済みはがきなど、他の自治体ではほとんど行われていない分別もあります。
1998(平成10)年から、1人1日当たり57g(卵1個分の重さ)のごみの減量を目標に「57(こうなん)運動」を推進して、発生抑制に向けた取り組みを行っています。
プラスチックの分別
同市はプラスチックについては1982(昭和57)年にプラスチック類(廃プラ)として分別収集を始めました。1996(平成8)年にペットボトルの分別、1999(平成11)年にテープ類の分別、2000(平成12)年にトレイ、発泡スチロールの分別、2001(平成13)年に容リプラ、と分別収集の対象を増やしてきました。容リプラは容リ協ルートで処理、ペットボトルは江南市内のリサイクル工場(愛北リサイクル)にリサイクル委託しており、繊維製品に再資源化されています。トレイも同様で委託処理して園芸用材料に再資源化されています。
しかし、製品プラ(同市では廃プラと呼んでいる)については分別回収したものの、最初は焼却処分、次は不燃物として埋め立てていました。
紆余曲折を経て、焼却設備の能力不足の問題と分別収集したごみは焼却しないという考えから、2001(平成13)年から外部委託による固形燃料(RPF)化を始めました。
製品プラの処理工程
環境美化センターの敷地内にある粗大ごみ処理施設(極東サービスエンジニアリングが維持管理)では、粗大ごみと製品プラの処理を日によって使い分けて行われています。製品プラは、分別収集されたあと回転式破砕機で破砕され、磁選機で金属が分離されます。粗大ごみの処理のときはラインが分かれて、焼却施設に運ばれる仕組みです。
破砕により減容したあと、直方体に圧縮梱包され、委託先の2社に運ばれてRPFにします。RPFの処理残渣もその2社で処理されています。
- 学習支援サイト