学校(大学)からのごみ
大学・大学院や学生寮でのごみの取り扱いについて、上海大学には見学させていただき、他の大学・大学院については友人に問い合わせました。一般家庭と同様、大学でもエリアごとにごみの分別の有無が見られ、上海大学では宿舎でも分別がされていました。
≪上海大学(上海市宝山区)≫
1.キャンパス内のごみの分類:リサイクルできるもの、その他のごみ
(ただし、実際はほとんど分類されずに捨てられており、回収業者が回収後に分類するようです。また、食堂では残飯も分類していました。)
2.学生寮内のごみの分類:リサイクルできるもの、その他のごみ
3.学生寮内のごみ出しのルール:リサイクルできるもの
(プラスチック(ペットボトル)、段ボール、古紙、缶)、電池、その他のごみ/日時指定ルールは特になし
(宿舎各階に各ごみ置き場があり清掃員がリサイクルできるものを持ち出すほか、リサイクル可能なものは1Fにも置き場があり清掃業者が持ち出すようです。)
≪华东理工大学(上海市徐汇区)≫
1.キャンパス内のごみの分類:リサイクルできるもの、その他のごみ
2.学生寮内のごみの分類:なし
3.学生寮内のごみ出しのルール:特になし(宿舎共同のごみ箱(分類なし)に学生が各部屋のごみを随時捨てる)
≪上海师范大学大学院(上海市徐汇区)≫
1.キャンパス内のごみの分類:リサイクルできるもの、その他のごみ
2.学生寮内のごみの分類:なし
3.学生寮内のごみ出しのルール:特になし(宿舎共同のごみ箱(分類なし)に学生が各部屋のごみを随時捨てる)
事務所からのごみ
私の主人の会社が入居しているビル(上海市长宁区)の事務所から出るごみの分類・回収の方法について管理会社に問い合わせてみました。
そのビルにはさまざまな国の企業のオフィスが多数入居していて、住居部分はありません。
入居している会社ではごみを分別せずにごみ袋にいれておき、フロアごとの清掃担当者がオフィスを回ってフロア共同のごみ箱にまとめ、さらに各階の共同ごみ箱のごみをビルの地下にあるごみ集積場に集めています。
オフィスおよびフロア共同のごみ箱用のごみ袋については市からの指定などはなく、オフィスではその会社が、フロア共同部分ではビル管理会社が市販の適当なごみ袋を購入し使用しています。
ビルのごみ集積場に集められたごみのうち、リサイクルできるもの以外のごみはビル管理会社が量に基づいてごみ回収業者に料金を支払い、毎日定刻(そのビルでは原則午後6時)に回収されていきます。
なお、ごみの仕分けをし、リサイクルできるものをリサイクル品回収業者に受け渡す個人にビルのごみ集積場の一部が貸し出されており、ペットボトルなどのプラスチックや缶、紙(A4サイズ)・段ボール、またビルの室内改修時などに出る建築廃材などのリサイクルできるものについては、その個人もしくは各フロアの清掃担当者がリサイクル品回収業者に持ち込んでいます。
このように、集積場でごみの仕分け・受け渡し業を営む個人や清掃担当者自身がリサイクル品回収業者に持ち込み売却することで彼ら自身が収入を得られるだけでなく、ビルとしても回収されるごみの量を減らすことができ、ごみ回収料金を削減することができるため、両者が得をしてうまく回るシステムとなっているようです。
また、そのビルには飲食店も入居しているので、その状況についてもビルの管理会社に聞いてみました。
飲食店からのごみについては野菜くずなどの台所ごみは分類して専用のごみ箱に入れておき、ごみ回収業者が回収していきます。
ビンや缶などリサイクルできるものについてはオフィスからのごみと同様、ビルのごみ集積場で仕分けをされ、リサイクル品回収業者に持ち込まれます。
なお、日本で行われているようなビールビンなどのビンを洗浄し再び使用するようなことは上海では行われていないようだということでした。
飲食店からのごみ
(4)のオフィスビル内の飲食店とは別の飲食店(上海市长宁区)にもごみの取り扱いについて問い合わせてみました。飲食店からのごみの回収を行う業者は市衛生局の資格が必要で、店が独自に回収業者と契約し回収費用を支払う場合と、入居するビル全体で回収業者と契約する(ビル管理費に回収費用も含まれる)場合があるようです。
ごみの分類は、ビン、油、そして改装時などに発生する建築廃材はリサイクルできるものとしてビル指定の場所に集めておき、食べ残しを含む台所ごみとその他のごみは分けて捨てます。
問い合わせをしたお店からは缶やペットボトルはほとんど出ないため、出た場合もその他のごみと一緒に捨てるようですが、リサイクル品回収業者に持ち込めば売れるので、お店が捨てたごみから分別回収する人がいるかもしれない、ということでした。
ビールなどのビンの洗浄・再使用についてこちらのお店でも聞いてみましたが、メーカーでは行っていないようだということでした。
なお、中国では主に高級銘柄の日本酒などの空のビンに違うお酒を詰めて販売したり、集めた廃油を別の商品に使ったりする悪質業者が横行していて問題となっているため、飲食店から出る廃油やお酒の空ビンをそうした業者に販売することは禁止されているとのことです。
ちなみに、インターネット(百度百科)によると飲食店からのごみの収集運搬および処理や管理については『上海市餐厨垃圾处理管理办法(上海市飲食店調理場ごみ処理管理規則*)』により台所ごみはその他のごみと分類し、液漏れなどがないよう密閉し排出することなどが定められているようです。
(*訳語は私訳です。)
ごみの回収後について
家庭からのごみのうち、分別せずにごみを集めておくマンションや居住小区ではまとめて回収されていった後どのようにごみが処理されるのかはわからなかったのですが、ごみ分別奨励範囲の居住小区では地区内に設置された「リサイクルできるもの」のごみ箱についてはリサイクル品回収業者がリアカーやバイクなどで頻繁に回り、ごみを廃品集積所まで運んでいきます。
廃品集積所ではリサイクルできるものを品目ごとに分類し、運搬しやすいようにある程度の量でまとめ、品目ごとに業者がさらに別の場所へ運んでいき、リサイクルをしていくシステムのようです。
廃品集積所(上海市闵行区)では、残念ながらプラスチックごみは見かけることができませんでした。
また、街中に設置されたごみ箱はリサイクルできるものとその他のごみの2種類に分かれているものの、ごみ回収業者はこの2種類を分けずにまとめて回収し、リアカー付きの小型バイクで運んでいました。
インターネット上の記事(2014年5月6日新華社)によると、中国では固形廃棄物は海への投棄、焼却、埋め立てによる処理を行っていて、上海においては固形廃棄物の約77%が埋め立て、約23%が焼却処理されているとのことでした。
また、上海市普陀区にある上海江桥生活垃圾焚烧厂(上海江橋生活ごみ焼却場*)では、ごみを焼却する際に発生する熱を有効利用して発電も行い、焼却場自体で利用しているほか、売却もしているようです。
なお、リサイクルできるものとして回収されたプラスチックがどのようにリサイクルされていくのかについては残念ながらよくわかりませんでした。
(*訳語は私訳です。)
環境問題の意識について
上海市内ではごみ箱が比較的多く設置されており、また、地区担当の清掃員が路上や公園などのごみを頻繁に収集している姿もよく見かけますが、それでも路上に直接ごみを捨てる人は多く、空のペットボトルやプラスチック包装材、果物などの食べかすなども路上に散乱しているのをよく目にします。
こうしたごみを路上のごみ箱に捨てるとしても、(私自身も実際目にして思ったように)回収する際に分別していないと多くの人が思っていることから、わざわざ「リサイクルできるもの」と「それ以外のごみ」に分別して捨てる人が少ないようです。
一般的にプラスチックは難分解性であるため埋め立てる場合は土壌や地下水汚染へ影響し、また、焼却する場合は大気汚染に影響すると中国では考えられていることから、ごみ処理場に対する反対運動は中国各地で起こっているようです。
この原稿を書いている2015年4月時点でも広州でごみ焼却処分場建設反対運動に約1万人が参加し、建設が中止されたことが大きなニュースとなりましたし、上海でも2012年に松江区で固形廃棄物焼却場建設反対運動があったようです。(固形廃棄物埋め立て処理場反対運動については分かりませんでした。)
なお、上海では当面はごみの回収有料化は行わず、ごみの分類の徹底やエコポイント制度の推進などを考えているということです(2015年2月5日解放日報より)。
環境教育について友人数人に聞いてみたところ、レジ袋などのプラスチックごみによる、いわゆる白色汚染による危害や、プラスチックが難分解性であるので埋め立てると環境汚染につながるといったことは中学校などで学習したことがあるという人が多かったのですが、ごみの分類やリサイクルについて学習したことがある人はいませんでした。
また、小学校1~3年で地球環境問題や中国における環境問題などについて学習したという人もいました。
問い合わせた友人たちの出身地域や年代はさまざまであるため、中国国内であっても学習内容に差があるかもしれません。なお、職場での環境教育制度は一般的にはないようです。
プラスチックに対するイメージについても聞いてみたところ、レジ袋など、プラスチックは便利であるという意見もありましたが、環境への悪影響を考え、使い捨ての包装材などを購入する場合は紙製のものを選ぶようにしているという友人もいました。
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