2009.09.15

2009年9月掲載 プロ野球界の環境への取り組みジェット風船リサイクルや容器リサイクルが中心

2009年9月掲載 プロ野球界の環境への取り組みジェット風船リサイクルや容器リサイクルが中心

プロ野球界の環境への取り組み  ジェット風船リサイクルや容器リサイクルが中心

プロ野球界が環境への取り組みを強化しています。
その一つが、日本プロ野球組織(NPB)が2008年から「野球の力で温暖化ストップ」というキャッチフレーズで始めているもので、具体的な活動計画は「NPB2008 グリーンベースボールプロジェクト」としてまとめられました。今シーズンは「9イニング3時間以内」という目標を掲げ、試合時間をただ単に短くするというのではなく、「ムダな時間を省いて、テンポのいい試合をみんなで心がけよう!」という思いをこめた新スローガン 「Let’s 省 time!」 (レッツ・ショー・タイム) を発表しました。昨シーズンの9回終了試合785試合の平均試合時間は3時間9分でしたが、9回終了試合の平均試合時間を3時間以内にすることで、電力削減量は210,694kWh 、CO2換算では約117トンの削減になるということです。

 

各球団の環境への取り組みも年々活発になっています。
北海道日本ファイターズは、2007年より球団グッズ配送車にバイオディーゼル燃料(BDF)を使用するなど、環境への取り組みを積極的に進めていましたが、2008年6月には、長期的な視点で環境活動に取り組むため、「ファイターズ・エコプロジェクト」の立ち上げ、2009年2月には球界初となる環境マネジメントシステム「ISO14001」を認証取得しました。エコバッグ、マイ箸、リサイクルせっけんの配布、エコナイターの開催など、来場者を巻き込んでの啓発活動で、球場でのごみ減量も成果が出ています。

福岡ソフトバンクホークスは昨シーズン(2008年)半ばから、本拠地のヤフードームで、以前は焼却処分していた黄色のジェット風船を回収し、リサイクルする取り組みを始めました。プロ野球の応援のときに飛ばされるジェット風船は一試合で1~3万個にも達すると見られていますが、ヤフードームでは使用済みジェット風船を20個以上集めて係員に渡すと限定ステッカーと交換してくれます。回収したジェット風船の風船部分(天然ゴム)は固形燃料(RPF)として、笛の部分(プラスチック)はハンガーなどにリサイクルされることになっています。福岡ソフトバンクホークスマーケティング㈱ 宣伝広報室によると、シーズン半ばから始めたこともあり、まだリサイクルに必要な一定量まで風船が集まっていないため、今シーズン(2009年)も引き続き取り組んでいます。また、同球団はキャンプ地の宮崎でも、「フォークス・ビレッジ環境宣言」を出し、南九州コカ・コーラボトリングの協力で、ゴミの分別回収とリサイクルを推進するため「エコステーション」を設置し、会場内のゴミの一元処理を行うなど、リサイクル可能な容器や食器の使用を進め、ゴミ減量による環境負荷の低減をはかっています。

 

東北楽天のフルキャストスタジアムの環境活動は「財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク」(MELON)が、宮城県・仙台市のプロスポーツチームと提携して進めている「仙台発エコスポーツ推進プロジェクト」の一環として行われているのが特徴です。同スタジアムでは、2005年からエコステーションを設置してPETボトル、ビン・缶、紙コップ、割りばしなどを回収しリサイクルに回すほか、紙コップ削減のため、プラスチック製のタンブラーを販売しています。タンブラーを持参して飲料を購入すると100円引きになるというインセンティブがあります。使用済みのジェット風船は10個集めるとステッカーと交換でき、風船は固形燃料(RPF)にリサイクルされます。

 

他球団でも、オリックス・バファローズは使用済みユニフォームや球団旗をエコバックにリメイクして商品化し、収益金を植林活動に活用する環境プロジェクトを展開するなど、さまざまな取り組みが行われています。

FRP船廃船リサイクル、全国で実施

FRP船廃船リサイクル

軽くて耐久性があるため、クルーザーや漁船などに多用されているFRP船(ガラス繊維強化プラスチック製の船舶)は、大きさと強度ゆえに廃船処理が大変なことから、不法投棄が問題になっていました。

これを踏まえて、製造事業者等の団体である(社)日本舟艇工業会はEPR(拡大生産者責任)の考え方、循環型社会の形成の必要性、国土交通省におけるFRP船リサイクルシステムの調査研究の成果などを基軸に、主要製造事業者7社(川崎重工業、スズキ、トーハツ、トヨタ自動車、日産マリーン、ヤマハ発動機、ヤンマー舶用システム)を中心に「FRP船リサイクルシステム」を構築しました。

 

廃FRP船は地域ごとに集められ、粗解体された後、中間処理場で破砕・選別等を行い、FRP破材は最終的にセメント焼成の原燃料に利用することにより、リサイクル(マテリアル・サーマルリサイクル)されます。

同システムは平成17年(2005年)11月にスタートし、対象地域を広げ、3年目の平成19年度からは全国で実施しました。

平成21年8月現在での「FRP船リサイクルシステム」をご利用された廃船処理隻数は、  累計2511隻となりました。

 

なお、リサイクルの申込受付・処理期間は都道府県によって変えていますが、いずれも前期(4月~)と後期(9月~)の年2回に分けられており、FRP船リサイクルマークのある全国の登録販売店販売店か(社)日本舟艇工業会 FRP船リサイクルセンターに相談してください。

(社)日本舟艇工業会 FRP船リサイクルセンター(http://www.marine-jbia.or.jp/recycle/index.htm

環境省のPETボトルのリユース・デポジットについての 調査結果、まとまる  「店頭回収+リユースはリサイクルより環境負荷が大きい」

ペットボトルの写真

環境省の「ペットボトルのリユース・デポジット研究会」(注)の第7回が2009年7月30日に開かれ、実証試験が行われていたペットボトルのリユースについて、試験結果がまとめられました。

実証試験は08 年8月から09年3月まで、デポジット制を利用したリターナブルペットボトルの販売・回収・洗浄について、ミネラルウォーター1.5Lの専用ボトルを使用し、オープンシステム(店頭販売、横浜市の京急百貨店など3店舗が協力、デポジット10円と20円)とクローズドシステム(宅配、パルシステム千葉が協力)について行ったものです。

 

(1)販売と回収

実験の結果、オープンシステムについては、販売本数は1,025 本、回収本数は519 本、回収率は50.6%であり、クローズドシステムについては、販売本数は1,708 本、回収本数は1,629 本、回収率は95.4%でした。

(2)洗浄トラブル(風味不良の発生)

1 次販売後の洗浄・再充填において風味不良が発生しましたが、原因は洗浄工程で使用する洗浄液の調合不備による洗浄力の低下であったため、洗浄液成分の組成、温度、時間を点検し、正確に調合した上で洗浄を実施するなどの対策がとられました。

(3)品質管理について

1 次回収したボトルを2 次販売に供するため、1,582 本の回収ボトルについて目視検査を実施したところ、口紅等で汚染されたボトルが9 本(オープンシステム1 本、クローズドシステム8 本)、傷が付いているボトルが4 本、他の飲料に使用した形跡のあるボトルが3 本ありました。これらはリユースに回し難いため、洗浄前にリサイクルに回されました。また、ボトルの安全性を確認するための試験では、113 本のボトルで臭いが検知されました。これら113 本については、リユースに回さず、洗浄効果を確認するための実験用として洗浄・再検査を行ったところ、すべてのボトルで異臭が除去されていることが確認されました。z

(4)LCA分析の結果

容量2リットルのミネラルウォーター用ボトルを使用後にリサイクルする場合のCO2排出量は1本当たり133gとなり、使用済みボトルを店頭回収し、洗浄、再使用する場合は一本当たり222gと算出されています。これに対し、クローズドシステムでは回収率が高いためCO2排出量は同174gmに抑えられると算出されました。販売地までの輸送距離が100km未満に短縮されれば、ボトル再使用の環境負荷は、リユースはリサイクルよりも小さくできると分析されました。

今回の実証試験の結果から、研究会は次のような見解を出しました。

  • オープンシステムについては、現時点では、85%、90%といった高い回収率を確保することが全体的には難しいため、リユースに比べリサイクルの方が、環境負荷が低いこととなる。
  • クローズドシステムについては、概して高い回収率が見込まれるため、充填工場から販売拠点までの輸送距離を概ね100km 未満等に限定すれば、リサイクルに比べリユースの方が、環境負荷が低いこととなる。

ほかに、外食産業でのリユースの方向性や、環境負荷軽減にはボトル容器の軽量化が最も有効であることなどの見解を出しています。

(注)正式名称は「ペットボトルをはじめとした容器包装のリユース・デポジット等の循環的な利用に関する研究会」(座長・安井 至 国連大学名誉副学長)

詳細:環境省HP(http://www.env.go.jp/
ページ内検索「ペットボトルリユース実証実験結果の取りまとめ」

廃プラスチックの混合回収・リサイクルで、実証実験行われる経済産業省がモデル事業を民間企業に委託、名古屋市も協力

容器包装リサイクル法では回収・リサイクルの対象が容器包装に限られており、おもちゃやバケツなどの日用品は明らかにプラスチック製品であっても分けて回収する必要があります。そのため、全国では、家庭と事業所から出た廃プラのうち30%以上が、リサイクルされずに焼却や埋め立てに回されているのが現状です。プラスチックの再生利用率を上げるためには、さまざまな技術やシステムが必要となります。

その一つの試みとして取り組まれているのが、プラスチックメーカーの株式会社 未来樹脂(東京都)の実証実験です。

この実証実験は、経済産業省の「低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業」の一つとして、プラスチックメーカーの株式会社 未来樹脂(東京都)が委託されたものです。実験には、かねてより高効率のリサイクルシステムづくりを目指している名古屋市も協力しました。

名古屋市と未来樹脂が共同で行っているのは、以下の二つをテーマとした委託事業です。

  • 容リ材を使って高品質な製品を作る技術開発
  • 容器包装以外の廃プラスチックを容器包装廃棄物と混合回収し、従来の容器包装再生処理ラインにのせたときに生じる課題点と、成果物の評価・検証

このテーマに沿って、2009年6~7月の2カ月間、名古屋市緑区の熊の前学区、約3千4百世帯から容リ法対象外の廃プラスチックと容器包装廃棄物が混合回収されました。回収した廃プラはプラスチック以外の素材を選別・除去した後、粒状のペレットにされ、現在は材料としての評価検証が行われています。