協会の活動:2009年9月掲載
プラスチック処理促進協会の講演会
「家電リサイクルの最新動向」


家電リサイクルが進んだ最大の要因はプラスチックリサイクルが予想以上にできたこと

株式会社テルム 早田輝信氏のお話

2001年に家電リサイクル法が施行されて以降、日本の廃家電は埋め立て処分からリサイクルへと順調に成果を上げてきました。法施行5年後から始まった見直し作業の結果、今年度からは、対象品目の追加や再商品化基準の引き上げを含む改正家電リサイクル法が施行され、プラスチックのリサイクルについてもこれまで以上の役割が期待されています。そこで、プラスチック処理促進協会は2009年7月9日、廃棄物処理会社、(株)テルムの早田輝信氏を講師に「家電リサイクルの最新動向」と題する講演会を開きました。

講演者プロフィール 早田輝信氏
1970年、九州大学応用化学卒。東芝でFRP、触媒燃焼、PCB光分解、廃プラ油化を担当。家電リサイクルは93年から関与。所属学会、「廃棄物循環資源学会リサイクル部会」「高分子学会グリーンケミストリー研究会」「プラスチックリサイクル化学研究会」

家電リサイクル法施行までの経緯



世界の家電リサイクルの出発点となったのは、1992年にリオ・デジャネイロで開かれた「地球サミット」(環境と開発に関する国連会議)です。欧州はそれを踏まえてすばやく法制化やリサイクルの動きを始めましたが、日本は95年くらいから欧州詣でという形で調査を始めました。各メーカー代表が集まり家電製品協会として欧州調査に2度行ったのもこの頃です。この調査で私はリサイクル技術を初めて見ました。オランダのフィリップスでテレビのブラウン管をニクロム線で切るのを見たときは非常に感激した記憶があります。

96年には家電製品協会が国の補助を受け茨城県に実規模実証プラントを作りました。

全メーカーが参加してリサイクル試験を約2年間行いました。このプラントではAI(人工知能)利用システムの導入や低温破砕、基板からのはんだ回収、金属・樹脂混合物燃料化工程といった先進的技術開発も試みられたのですが、結局、法施行時に採用されたのは、自動車のシュレッダー処理をモデルにした方法です。しかし、このとき取り組まれた先進的技術は現在、再評価されるべき時期に来ていると言えます。

家電リサイクル法の特徴と評価



日本の家電リサイクル法は、世界で初めて「拡大生産者責任」(注1)が明記されたという点で画期的なものです。また、4品目対象、料金後払い方式をとったことも、世界の常識から外れたものと言われました。リサイクル率(再商品化基準)は、鉄を全量回収せよということで、当時のシュレッダーに比べればきつい数字が定められました。リサイクル料金は当時の東京都の試算結果より低いが通常の産廃処理に比べれば高いと言えます。ただ、このことがリサイクルを安定させた大きな要因と思っています。

注1)拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility/EPR)
:経済協力開発機構(OECD)が提唱した概念で、「製品に対する生産者の物理的および(もしくは)経済的責任が製品ライフサイクルの使用後の段階にまで拡大される環境政策上の手法」と定義されている。生産者が境的側面を配慮した製品の設計(リサイクルしやすい製品や廃棄処理の容易な製品等)に移行することを狙っている。

処理システム



処理システムはご存知のようにAグループとBグループに分かれ、全国に48プラントが配置されています。

処理工程では、破砕・分別の前に、手解体があるというのが家電リサイクルの特徴です。目的は素材の回収、フロン・鉛など有害物の除去、破砕困難なコンプレッサーなどを外すことです。手解体で回収しているものには、テレビのブラウン管、冷蔵庫の冷媒フロン、エアコンのラジエーター、洗濯機の水槽などがあげられます。テレビはブラウン管や高価金属を回収するために全量手解体されています。

手解体後は破砕選別装置にかけ、鉄と非鉄、シュレッダーダストに選別されます。鉄は銅の残留が0.1%以下でなければ大幅に価値が下がります。これを解決する手法はいろいろ試みられていますが、一番のポイントは噛み込みを無くす破砕方法です。ハンマー式やセン断式より、研磨機能のあるチェーン式破砕機などが有効です。

非鉄は渦電流選別で銅とアルミに分けます。

リサイクル実績



廃家電の回収実績は、大方の予想を上回り、法施行から2年目には、法制定前に自治体が引き取っていた1000万台を超えました。一年目の夏には冷蔵庫の処理が追いつかず、リサイクルプラントの周りに冷蔵庫の山が出来ました。みんなが「万里の長城が出来た」というほど壮観なものでした。日本人のリサイクルに対する意識の高さは賞賛に値すると思います。

再商品化率(リサイクル率)が初年度から法定基準を大きく越えたのは、非常にていねいな処理をしたことが要因と言えます。リサイクル率はその後も年々向上し、初年度と19年度を比較すると、銅、アルミ、その他有価物(プラスチック)が倍から10倍近く増えているのが特徴です。

不法投棄も当初はリサイクル料金が高いから2割、3割は不法投棄が出ると予想されていましたが、回収した量の2%以下にとどまっています。

また、家電リサイクルは市場創出にも寄与しました。リサイクル料金とリサイクル台数を掛けると年間300億円を越えますが、それだけの市場が創出され、2000人の雇用創出につながりました。

このように、メーカーの努力、家電リサイクルプラントの手解体手法や技術開発、消費者の高い意識に支えられ、日本の家電リサイクルシステムは順調に推移し、大きな実績を上げることができたのです。

家電リサイクル法見直しのポイント



今回、改正された家電リサイクル法の見直しの議論の中で、ポイントになった点は、大きく分けて5つあります。

1)リサイクル費用の支払い時期

現在は後払いですが、これを世界の常識である前払いにすべきという意見が非常に強くあります。つまり商品価格の中に上乗せしようということですが、リサイクル費用が商品に上乗せされた場合のリスクについては、人により考え方に大きな差があります。メーカー側は、現在のように商品価格を1円2円でも下げようという激しい競争の中で前払いになると、リサイクル費用はあっという間にどこかに霞んでしまうという意見です。それほど、競争は激しいといえます。

2)リサイクル費用

リサイクル費用が同じ品目なら大きさを問わず一律料金というのは不適当だということで小型のものは安くなりました。エアコンは銅がたくさん回収でき、これが高く売れるので料金が下がりました。

3)収集方法の効率化

収集方法の効率化については、収集場所がAとBに分かれていることが消費者に不評を買っているため、受付はどちらの商品でもよいことになり、これをいつから実行するかという段階になっています。私見ですが将来はリサイクルも一緒になってくると思われます。問題は独禁法になりますが、すでにAとBを分けずに処理しているプラントもあるので、分けることが絶対条件にはならないのではないかと思いますし、それは悪いことではないと思います。

4)対象機種の拡大

対象機種は今回、薄型テレビ、ドラム洗濯機、乾燥機が入りました。しかし、薄型テレビのリサイクルについては、まださまざまな課題があると考えています。薄型とブラウン管では同じテレビでも構造から言ってまったく別の商品と考えるべきですが、処理費用も同額とされました。

一方、小型家電については、ヨーロッパには回収している国もあります。日本でも回収すべきとの意見はありますが、回収費用は非常に高くなります。小型家電の解体費用は大型家電とそれほど変わりませんが、売れる金属の量がはるかに少ないためリサイクル費用が割高になることをご理解いただきたいと思います。

リサイクルは基本的に逆有償の世界だと、私は思っています。だから社会的に支えてやらないと順調には進まないのです。

5)海外輸出された中古製品のリサイクル

この問題は今回新たに発生したわけではありません。自治体が回収していた頃も生産量の約半分しか回収されていませんでした。家電リサイクル法により、回収したものはほぼ全量リサイクルできるようになったのですが、生産量と比較すると処理量は半分であり、残りは海外輸出されているのが実態といわれています。

欧米でも廃家電の半分以上はアフリカや南米に流れていますから、中古製品の海外輸出を止めるのは困難な話です。ただ、リユースされた中古製品のリサイクルを誰がするのかという問題が残っています。このような状況でリサイクル責任をメーカーに負わせるのは酷といえます。

現在、東南アジアの各国から家電リサイクル法の整備にあたり、日本の工場見学に訪れる方が増えています。リサイクル費用を適正に渡してくれるのであれば自分たちで責任もってリサイクルするよという発言もあります。廃棄物の輸出入規制に関してはバーゼル法があり、この問題は相当複雑であり、実態に合わせてリサイクルを進めていくことになりそうです。また日本のリサイクル技術は進んでいるため、リサイクルしにくいものは日本に集めて処理した方がよいという意見もあります。国際資源循環の中で、どのように合意点をみつけるのか、費用の問題もあり、なかなか結論が出ないというのが現実です。

家電におけるプラスチックリサイクルの現状と課題



家電リサイクルが非常にうまくいった最大の要因は、プラスチックのリサイクルが急速に進んだことです。

家電に使われるプラスチックの量は年々増えていますが、使われている種類が、テレビはほとんどPS、洗濯機はほとんどPPという具合に、そう多くないためリサイクルしやすいのが第1の理由です。

第2の理由はリサイクル技術の進歩です。従来、プラスチックのマテリアルリサイクルは工程廃プラを破砕・洗浄・調質・造粒(ペレット化)して行われていました。今回、市場から回収された廃家電のプラスチックをリサイクルするには、異物除去と選別の徹底という工程が必要になります。コスト高になりますが、この工程の追加で品質向上が図られ、リサイクルが可能になりました。

第3の理由は、プラスチックの市況が急によくなり、バージン材料の値段が2倍くらい上がった時期があるということです。

これらの中でもとくに技術開発が大きな要因だと思います。

リサイクルされるプラスチックの代表例は、テレビのキャビネット、冷蔵庫の中の庫内部分、野菜カゴ、洗濯機の水槽ですが、これらは、材料がPS、PPとほとんどわかっているため、選別工程を簡素化することができました。

異物除去は大変です。回収品にはゴミがたくさんついており、たとえばテレビの中にはホコリが充満しています。またキャビネットと違う材質のものがネジで留められていたり、不織布がついていたりということがあります。こういうものは手間をかければ取れるのですが、当初、一番問題だったのはラベルでした。金属製や紙のラベルが接着剤でついており、はがすのが大変でした。いろいろやった結果、切り落としてしまうのが一番簡単ということで、現場では切り落とす方法が採用されました。しかし現在は環境配慮設計が進み、同じ材質でラベルを作ることで解決されています。

洗濯機の洗濯槽は取り外すと周りにべっとりと黒い垢がついています。これは2、3日乾燥してから叩けばポロポロ落ちるのでそれほど大変ではありませんが、問題はカビです。プラスチックの中に根が生えたようになって付着したカビは取るのが簡単ではありません。これを除去するために乾式洗浄機というものを使います。この機械は酒造メーカーが米を削るために使っているものと同じで、お米程度の大きさなら表面を1割2割削ればよいのですが、廃プラは1cm四方の破砕片の場合、表面を4割5割削らなければカビがとれません。カビそのものは廃プラの物性にそれほど大きく影響するものではありませんが、ペレット化したときに表面に黒や黄色の点になって出てしまうため、このような工程が必要になります。

1)水平リサイクルの課題

プラスチックを元の製品の部品に戻す「水平リサイクル」のためには、純度を99%以上にしなければなりません。そのためには、破砕前の工程で異物を徹底的に除去する必要が出てきます。材質別に選別するために赤外線式選別機でチェックし、金属探知機を使うことも必要です。さらに、ペレット化の時にフィルターで異物を除去するなど複数の工程が必要になります。

また、プラスチックは金属に比べ劣化しやすいため、劣化防止のためにバージン材料でもいろいろな改質剤が入っています。その代表的なものに酸化防止剤があります。酸化防止剤は劣化のスピードより速く飛散してしまうため、廃家電として戻ってきたときには酸化防止剤の残存量は非常に少なくなっており、もう一度使用するためにはフェノール・リン系の酸化防止剤を再添加し、元の状態に引き上げてやる必要があります。酸化防止剤の残量測定は難しいうえ、戻ってくるものが全部同じ年数を経たものとは限らないため、たとえばシャープさんではTG-GTA(熱分析)という方法で測定し、残存量のばらつきは大量処理で平準化しています。

また、プラスチックを再利用するためには金属不活性剤の添加も必要です。これは耐久性を向上させるためです。純度99.7%のプラスチックには非常に微細な金属が0.3%残っているため、何もしないといわゆるクラック(ひび割れ)の原因になります。そこで金属不活性化剤を入れ、金属が暴れ出さないようにしているわけです。

いずれにしても、この7〜8年で、プラスチックの水平リサイクルがテレビ、洗濯機、冷蔵庫でそれぞれ可能となったのは、異物除去と選別の技術が大きく進んだことを意味しています。

2)シュレッダーダストの選別

現在、水平リサイクルが可能な家電プラスチックは、手解体で回収されており、プラ全体の1/4〜1/5の量です。それ以外のプラスチックはシュレッダーダスト(注2)として排出されているため、シュレッダーダストからプラスチックが回収できないかということにメーカーはチャレンジしています。シュレッダーダストからプラスチックを選別する方法は多くの方法があり、形状選別、風力選別、乾式比重選別、湿式比重選別などを組み合わせて行なわれています。パナソニックさんは10工程を組合せてシュレッダーダストからプラスチックを回収していますが、使いみちは棒抗、燃料と聞いています。

シャープさんはシュレッダーダストの中からPPだけを回収するために湿式選別を行っています。PPは水に浮くので、水でPPを回収する方法をとったわけですが、回収効率を上げるためには、やはり何段階もの前処理が必要です。とくに、プラスチックは破砕段階で微粉が出て、水の中でプラスチックの破砕片がくっつくとなかなかはがすのが難しいという問題があります。そのため比重選別機に泡を立てたり、水圧を加えたり、谷を作ったりと、さまざまな試みがなされています。最近はこれ以外にもさらに高度な選別法が開発されています。湿式サイクロン選別、ジグ選別、砂媒体比重選別、静電分離選別、色彩選別などの開発が進められています。

注2)シュレッダーダスト:廃製品を粉砕し有価金属を回収した後に残ったもので少量の金属類と多量のプラスチック類からなる

3)植物由来ポリ乳酸のリサイクル

ポリ乳酸は性能が高まっており、値段はまだ高いとはいえ、昔は通常のプラスチックの5倍くらいしたものが現在は2倍くらいまで下がりました。今は用途として、ノートパソコンの筐体、テレビのリモコンケースや中の一部の部品などに使われています。

回収家電の中にこのような素材が混じってきたとき、どう対応するかはこれからの課題ですが、マテリアル、ケミカルリサイクルから幾つか新技術の提案がなされている段階です。

今後の展望



1)リユースの重要性

家電リサイクルが順調に進むなかで、循環をよりスムーズに進めるためには、製造ラインと同じ速度でリサイクルも行われることが要求されるようになりました。しかし、課題もたくさんあります。

まず、廃家電の構成材料はさまざまで、同じ種類の製品でもメーカーごと、製造年ごとに構成材料が違います。テレビのPS一つとっても、使用された難燃剤の種類が違い、10年前使われた物質が現在は使用禁止になっているものもあります。したがって、各製品の寿命がある程度一致していれば、リサイクルもし易くなるということは言えます。

また、廃家電の回収量は例えばエアコンなら夏は冬の4倍にもなるなど季節変動があります。量の変動は事業をする上では大きな影響があります。これをうまく解決しているのは複写機メーカーで、製品を貸し出して、何年で交換するということをメーカーで決めて回収しています。家電製品は複写機に比べると桁が違うほど多くのものが出回っているため、今すぐというわけにはいきませんが、リサイクル量の変動を解決するには基本的にはリユースが一番よいと考えています。

東芝では数年前、若い新入学生用に、テレビ・冷蔵庫・洗濯機・レンジの4点をレンタルするシステムを作りました。ところが、最初のうちは伸びたのですが、最近は借りる人は新品じゃないといやだということで、リユースは成り立っていません。テレビは人が使ったものでもいいかもしれませんが、冷蔵庫は他人の使ったものは使いたくないというわけです。国内でのリユースを進めるためには消費者の意識が大きなカギを握っていると思います。

2)環境配慮設計とLCA

メーカー側の環境配慮設計もそう簡単に進んだわけではありません。一般に解体し易い製品設計では製品価格が高くなるため、設計者は基本的に嫌がります。

しかし世論の強い後押しによって、徐々に進んできたというのが実態です。最も効果があったのは、設計者に実際に解体を体験してもらい、解体しやすい設計の必要性を理解してもらったことです。

具体的な環境配慮設計では、熟練度の低い人でも作業が可能になるよう、標準工具で外れるように部品を連結する、解体しやすいようにマーク表示をする、テレビの部品点数を削減する、使用するプラスチックの種類を削減するなど、さまざまなことが行われました。

LCA(注3)的には、リサイクル・廃棄の段階よりも、家庭での使用段階で省エネするほうがはるかに効果的ですので、メーカーとしては今後とも省エネ製品の開発を強力に進めるべきであると考えております。

注3)LCA:ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)。ある製品が製造、使用、廃棄あるいは再使用されるまでのすべての段階を通して、環境にどんな影響を与えるかを評価する方法のこと。

リサイクルは社会の要請です。これまでは家電リサイクル法の大きな枠組みの中で、メーカーをはじめ関連業界の努力により順調に進んだ家電リサイクルも、現在のように変動が激しい中で自由競争を続けると、不法投棄などの問題が増えるのではないかと懸念されます。したがって、社会全体で支えていく仕組みをどうつくるかがこれからの大きな課題だと思います。

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